内容説明
今や「うつ病」は、すり減った貨幣のごとく、ありきたりのものとして世に流通し、それが医療の現場に還流され、臨床概念を侵食している―軽症化と操作的診断により、安易な了解を拒む「病」を語る臨床知は散逸し、患者の中に鬱滞した苦悩は「罪悪感」から「空虚感」へとさまよい出ている。気分障害をめぐる精神医学の静かな危機のなかで、主体の成立に刻印された空虚を追跡し、その核心を再度豊かな言葉で描き出す精神病理学論集。
目次
1 うつ病の臨床―さりげない営みの舞台裏(うつ病の臨床診断について;バイプロダクトとしての精神療法 ほか)
2 マニーの精神病理―生のはずみ(マニーの精神病理―生命論的考察;ヒポマニーの精神病理―四つのスペクトラムによる変奏 ほか)
3 「うつ」の精神病理―ハード・コアへの三つの旅(存在の耐えがたき空虚―ポスト・メランコリー型の精神病理;「うつ」の構造変動―超越論的審級の衰弱とメタサイコロジー ほか)
4 うつ病と現在性―「第三者の審級」なき主体化の行方(内海健×大澤真幸)
著者等紹介
内海健[ウツミタケシ]
1955年、東京都生まれ。精神科医、専攻は精神病理学。1979年、東京大学医学部卒業。東大分院神経科、帝京大学精神神経科学教室を経て、東京藝術大学教授・保健管理センター長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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