出版社内容情報
著者はベイトソン本人から学んだ人類学者。その中核的な考えである「コミュニケーション論」をわかりやすく解説する。
内容説明
人類学者にして、生態学者、コミュニケーションを探求し精神医学・心理学にも大きな影響を与え、パプアニューギニアの部ノ司統合失調症者やイルカの対話を研究し、かの文化人類学者マーガレット・ミードの元夫でもあり、ニューエイジ思想のカリスマにして、禅センターで死んだ―グレゴリー・ベイトソンって何者?…という疑問をベイトソン本人から学んだ人類学者野村直樹がわかりやすく解説。
目次
ソフト・バット・ベリー・グッド
ベイトソン・セミナー
二十世紀最大の思想家
ヒトがもし進化を遂げなかったら?
主人と従士
ベイトソンって、なに?
ベイトソンの世界
その頃のベイトソン
あそび、フレーム、パラドクス
ダブルバインド前夜
それってダブルバインド?
ダブルバインドとは
ベイトソン展望
『精神の生態学』を読む―結びにかえて
著者等紹介
野村直樹[ノムラナオキ]
名古屋市立大学大学院人間文化研究科教授。スタンフォード大学博士課程卒業、文化人類学、Ph.D.(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
68
ベイトソンはデカルトの二分法的・分析的な思考を脱却し、全体的・直感的な思考をもたらした人だそうだ。とはいえ私が読んだベイトソンの印象では、分析的思考の厳密性は少しも失われていない気がした。分析的でありかつ直感的である所にベイトソンの凄さがあるのかも知れない。著者はベイトソンが亡くなる半年前のワークショップに参加したそうである。ベイトソンが科学の世界に何をもたらしたかという話と、晩年を過ごしたカリフォルニアの小さな町やサンフランシスコの病院、著者の前に現れた気さくで静かな老いの姿が溶けあい、清新な像を結ぶ。2017/07/16
非日常口
18
生物は環境と常にコミュニケートを繰り返している。ダーウィン進化論に、思考様式と行動様式を加味したベイトソン。客観性や真実は一つのストーリーに過ぎない。それが社会に蔓延し、エスカレートしはじめたとき、アートは偏向した認識を平衡する。ある輪郭内にいるとその外は伺えない。囲い込みつつ締め出すためだ。その間をつないだ気にするテクノロジーが環境にとけ込み、コミュニケーションも進化する。無意識がダイコトミー的に要請する事に、意識は強度を加え、グラデーションを付ける。ダブルバインドはインタラクティブに文脈を再編させる。2015/01/27
おおにし
17
大著『精神の生態学』をどこから読んだらいいかわからず積読になっていたが、この入門書は読み方のヒントを与えてくれた。『精神の生態学』に再挑戦したい。2022/02/27
ステビア
9
たしかに易しいけど、学説史なんかを踏まえて硬めにまとめてくれた方が良かったなあ。『精神の生態学』を読めということか?2013/10/16
soto
6
学際的ということばが一時よく使われたが、各分野の専門家の単なる寄せ集めが多く、ほんとうに学問の世界を横断的にわたり歩くようなスケールの大きさを感じられる研究者はほとんどいなくて失望したものだった。ベイトソンは自らの関心を探求していくなかで、結果としてとてもスケールの大きな学際的な研究を実際に成し遂げた、稀有な研究者のようだ。精神の生態学を読んだとき、断片的には面白さを感じるのだが、全体像をつかむのが難しかった。コンパクトな解説書ながら、筆者なりのベイトソン(全体)の解釈が示されており理解の手助けとなった。2017/04/24