内容説明
ロールシャッハ・テストがいかに生まれ、発展していったのか―本書ではまず、その創始者ヘルマン・ロールシャッハの生い立ちから『精神診断学』の発刊にいたる慎重にして困難な道のり、さらにこのテストに無限の可能性を抱きながら夭逝したヘルマンの思いまでが、エクスナーによって親しみを込めて語られる。さらに本邦にはじめて紹介されるヘルマン自身による「仕立屋のケース」は貴重な資料であるとともに、それが包括システムによって解釈されており、きわめて興味深いものである。そして解釈は実際にどのように行なわれているのか―ここではわが国の事例をエクスナーが行った解釈が示され、その緻密で柔軟な語り口から事例のパーソナリティーの本質に肉薄し、さらに治療計画へとつなげていく過程が、迫力をもって伝わってくる。さらに、ロールシャッハ・テストをはじめ、種々の心理アセスメントは何を目的として行われるべきかという重要な包括的なテーマを通して、とかく機械的と批判されがちな包括システムが、実は何よりも「個人」を尊重し治療に生かそうとするものであることが理解される。このエクスナーの治療哲学はヘルマン・ロールシャッハと通底するものであり、心理アセスメント実務上の確かな指針となるものであろう。
目次
第1部 ロールシャッハ・テストの誕生(ロールシャッハ・テストの起源と黎明期の発展;仕立屋のケース:ヘルマン・ロールシャッハ自身によるロールシャッハ・テスト)
第2部 事例研究(留年した大学生:そのハイラムダの意味;中年ビジネスマンの自殺を防ぐ;過食嘔吐を繰り返す事例への治療計画)
第3部 治療計画(治療計画におけるロールシャッハの適用)