内容説明
地理学では、人間活動と環境変化について古くから研究対象にしてきており、このテーマはまさに地理学の研究対象そのものであるともいえよう。本書を構成する18章は地理学の全体系を網羅したものにはなっていないが、それぞれの章が人間活動と環境変化について、独自の角度・視点から掘り下げるという形をとっていることが特徴である。
目次
古代後半~中世初頭における河原の出現
枕草子にみる平安時代の歴史的環境
都市の水文環境の変化
ダムの建設と環境変化
都市化と溜池の保全
海面干拓における単式干拓から複式干拓への展開過程と干潟の環境
すみわけられた都市社会空間―エスニック・マイノリティ社会とインナーシティ問題
情報化時代のオフィス立地と女性就業者の役割の変化
ニュータウンの高齢化―シルバータウン化する千里ニュータウン
都市商業の盛衰と多様化
集積・分散論からみた日本の産業立地政策の歩み
伝統工業の地域構成
木地挽きとタタラ製鉄による林野利用の展開
漁業をめぐる空間利用
ナスとダイコンの故郷
肥桶がとりもつ都市と近郊農村との縁
山村の生業
近代北海道の形成と土地開発
著者等紹介
吉越昭久[ヨシコシアキヒサ]
立命館大学教授
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感想・レビュー
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コウメ
42
読んで気になった点は「水文学」と「オフィス発生の定義」について、「水文学」については、蛇口をひねると美味しい安全な水がでるという環境に慣れているため、昔の人からすると非常識なことが考えされられた。大都市は水問題が多いが、技術進歩で水質悪化、水源問題、水害問題も改善されている。しかし、内水災害を中心とした水害の危険性が上がっているのを表を見ながら納得といく内容だった。/「オフィス」については、なにげにオフィスと言葉を使っているがその定義と発生の歴史を見ると産業革命にいきわたるのか、2020/11/14
chang_ume
7
歴史・自然・産業など地理学の論集。立命館大学系の研究者を中心に、ごった煮の面白さがあります。完新世段丘の形成過程を通じて「鴨川付け替え」を検討した高橋論考、清少納言の「ある一日」(長徳4年5月5日)を気象学的に復元した片平論考を主に。またシカゴ学派の分析キーワードをもとに、大阪市生野区と京都市南区東九条のエスニック・マイノリティについて、社会形成を「インナーシティ」の概念から考察した藤巻論考も、都市社会学の理論学び直しで得るもの大でした。改めて、シカゴ学派は都市の社会分析に植物生態学を援用したんだなと。2020/05/19