内容説明
朝も、昼も、夜も、くる日も、くる日も、降りつづく雨…。箱舟に乗りこんだ人間と動物とのハーモニーを精緻なエッチングで描きだす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリー
53
再読。池澤夏樹さんの著書『春を恨んだりはしない』の中の一節を読んだことが再読の動機でした。その一節とは、「神は自然を人間に対する意思伝達としてはお使いにならない。人が勝手に荘厳な夕日の中に「自然における神の栄光」を読み取るのだ。キリストは神を試してはいけないと言った。絶対に、どんな意味でも、今度の震災をノアの洪水と見なすべきでは。」です。池澤さんはその後、こう述べています。「天災に際してまず大事なのは「天罰だ、反省しろ」というお説教ではなく、連帯である。」と。【連帯】の二文字がこの本と初めて繋がりました。2020/05/24
chiaki
45
旧約聖書創世記から『ノアの箱舟』がとてもシンプルに描かれている。人間の行いが神の逆鱗に触れ、神は大洪水を起こす。世界をやり直すため、神の命でノアは箱舟を作り、彼の家族と地上のあらゆる生き物のつがいには救いの手が差し出された。肉食草食も共存する満員の箱舟内、なんてシュールな光景。アーサー・ガイサートの銅版画の美しさに惚れ惚れします♡ピーター・スピアーのも見てみたい!2021/07/03
なつ
35
ボールペン画?ではなく、銅版画。でも、どちらにしても凄い。描いたとしても、彫ったとしても。白と黒(=手を入れた箇所)だけで、箱舟、人、動物、木、岩、夜、朝、海、空、雨、水、太陽、山、そして、虹、自然界に存在するもの、自然界で生きる生物、その全てが表現されていて、隅々まで見入ってしまう。魅きつけられる。同時に、想像できる。この世界の色、彩り、それぞれの想いや願い、静かな息遣いや内なる声を。神は創造もするけど、破壊もする。期待と後悔を両手に、平穏や希望を祈る一方で試練や苦難も与える。神は愛。虹は約束。永遠の。2025/09/05
ケ・セラ・セラ
20
文章は淡々と書かれているのだが、家族だけで全ての動物たちの世話をするその大変さも書かれていたりして、ちょっとリアルに感じることができる。すべての生き物、ひとつがいずつって、すごい数。モノクロの緻密な画で、箱舟という閉じられた空間の中の様子が描かれる。物凄いことだぞとあらためて思ったり。2021/08/09
くり坊
16
小学校の読み聞かせ会に使う本を図書館本で物色。今回は、オーソドックスな昔話や伝説、宗教説話あたりでどうかと思いつつ、洋モノで行くか和モノで行くか、迷ってウロウロ。この『ノアの箱船』は細密な絵が美しい。意図して手に取ったわけではないが、見たら翻訳はドイツ文学者の小塩節先生、トシ子先生ご夫妻であった。こういうお仕事もされたのですね。2015/11/13