感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
parakeet_woman
2
彼はビルマで戦病死した。25歳だった。西洋詩のような端正な言葉運びと、痛切な感情の天秤が時に心地よく、時に冷えきった針として迫ってくる。「街路」が好きだ。美しい過去と、地獄のような現在と、まだ見ぬ未来。でも、きっと彼は未来をわかっていた。運命を変えるために彼はボードレールの唄を呪文のように口ずさんだのだ。しかし先に進むための物語が、得体の知れない悪魔によって押さえつけられている。唯一自由なのは、形容詞と名詞の、イメージと事物の美しく奇妙な婚姻だけである。2019/06/15
刻青
1
最初はひどく甘い。しかし、途中から信じられないほどに、詩としての硬度、純粋さを獲得していく。「骨を折る音」「風」そして「階段」。明らかに「死」の方に傾斜していく、その魂が選び取った言葉なのか。詩が、言葉でできている物だということがよくわかる。言葉以外の無駄がなく、極めて美しい。まるで死ぬことがそうだとでも言うように。死による「詩」の完成、というイメージは、虚太郎と共に、「荒地」という共同体の核になっているように思う。 「非望のきはみ 非望のいのち はげしく一つのものに向って 誰がこの階段を降りていつたか」2021/07/03