感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なる
14
二十歳で夭折した岸上大作の歌集。著者のことは知らなかったけれど、学生運動が盛んだった時代に身を置いていた人物のようで、歌集には学生運動らしき面影が漂っている。インテリジェンスな学生が学生時代に一度は通ることになる左派の文化をそのまま色濃く体現しているような歌集。学生運動の過程で生じた恋に耽溺し悲観へともつれ込んで行くという、割とスタンダードな精神かもしれないけれど、当人にとってはそれが全てでそれが世界だと感じる。最期に残した手記が強烈な印象。綺麗に終われず「デタラメダ!」が最後にくるのが切ない。2024/04/29
oz
5
初読。歌人岸上大作は安保闘争と恋愛に挫折し21歳で自死した。55年体制成立時、共産党は大衆支持を得るため武装闘争路線を破棄した。安保闘争を経て武装闘争に身を投じていた若者は穏健化した共産党に失望し、より急進的な左翼党派(新左翼)を形成する。この時文学に走った若者に倉橋由美子や柴田翔、そして岸上大作がいた。寺山修司や塚本邦雄らの前衛短歌の隆盛を横目に、あくまで自己を語り部として故郷、革命、そして恋を歌った。作品に文学的価値が高いとは言いがたいが絶筆である散文は、自殺者の心理を描写する強烈なテクストだった。2016/03/18