感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
13
川端康成の序文は、中条ふみ子を売り出すためのマネージメントの一つだと思う。ただこの時代は短歌にもこのようなビッグネーム(ノーベル賞作家)が序文を書くこともあったのだということである(それは中城ふみ子の特殊性だろうが)。そういう過程があったとしてもやはり「乳房喪失」後の彼女の短歌は凄いと言わざる得ない。それまではどこかしらナルシズムやセンチメンタルな歌の内容が多かったのだが死に向き合う者の声は壮絶と言わざる得ないだろう。2023/01/15
oz
9
初読。寺山修司によると前衛短歌運動は中城ふみ子論争に始まったという。末期の乳癌患者歌人による歌集は異例の売れ行きを見せる一方で、歌壇からは歌中の「われ」が強靭すぎることや、平明で俗である点が批判の対象となった。この時擁護に回った若手歌人らが批判を超克するように後の前衛歌人運動を主導してゆく。中城の短歌はあくまで近代短歌に根ざしつつ、安易な感傷性に落ち込めない情念が横溢することで、近代短歌的世界から逸脱してしまう。前衛的手法を用いずとも生理的に居心地悪く、愛誦からは程遠い点で、中城の短歌は現代的であった。2016/07/10
aki
3
デビュー作の『乳房喪失』(タイトルは中井がつけた)には川端康成の序文があるが、中城に対する冷たい視線(と余命なき者への露骨な好奇心)、圧倒的な「突き放し感」に唖然としたものだ。こんな序文が、あっていいんかい。ただ、川端の序文を得たことで、マーケティング的には成功したかな。「不眠のわれに夜が用意しくるもの蟇、黒犬、水死人のたぐひ」「音たかく夜空に花火うち開きわれは隈なく奪はれている」といった、ひとすじ縄ではいかない作品が並ぶ。椎名林檎がデビューしたとき、テイストが中城ふみ子に似ているなあと思った記憶がある。2016/12/28
石ころ
2
国分寺の古書店で購入。短期間で燃え尽きた人の歌集。2024/10/21
k
1
乳房喪失が貫く愛への執着。2010/04/26