感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きりぱい
6
日記という名の物語ではなくて本当に日記。1633年生まれの中流階級のサミュエルが10年記した日記の1660年度の一巻。当時のイギリスは、チャールズ1世が斬首され、革命政権が樹立するも混乱、王政復古が計られるという政治が安定していない時。大蔵省の下っ端役人から海軍士官へと政情に関する動きに関わり、後にイギリス海軍の父と呼ばれる人でありながら、どこへ行った、誰と会った、妻が、仕事が、持病がと、記されるのはたわいない日常。だけど、そこに風俗や人柄がうかがえ、王位復活の流れとともに面白くもなってくる。2010/10/04
ヴィクトリー
3
日記なので、毎日そんなに面白い出来事が起る訳でもないのだが、意外と楽しめた。王政復古がじわじわと進んでくる様や、それに伴っての出世、引越と、この1巻に記された1660年はまだ動きがある方なのかもしれない。しかし、本人の日常が生き生きと記されていることも十分面白い。主人やその奥様に愛情深く接された喜び、自分の地位が脅かされるかもといった不安、出合う様々な人の批評、同僚や友人達との飲食や談笑、歌を唄ったり楽器を奏でたりの楽しみ、そして妻を愛しつつもする浮気。本当に人間臭い。 2012/11/16
Susumu Kobayashi
1
エドワード・モンタギュという貴族を主人に持つサミュエル・ピープスという平民の、純然たる日記で、もちろん出版など想定していなかったはずである。したがって、身も蓋もない記述も散見される。この時代の一市民の日常が窺われる点で実に興味深い。海軍書記官の地位につこうとして一喜一憂したり、「落ちぶれかかっている男と相乗りする気はない」などと書いたり、いかにも人間くさい。冷えると、小便をする時に痛いと書かれているけど、病気じゃないのかと読んでいて心配になってくるのである。2012/11/09