出版社内容情報
ショーペンハウアーの「意志の否定」は生存を放擲し否定するようなものではなく、むしろこの世での生存をより高い次元において肯定し、苦しみからの真の救済をもたらすものであった。
ショーペンハウアーのペシミズムの哲学は、この世に生きることを諦める「弱さのペシミズム」ではなく、この世に生きることに必死で意味を見出そうとする「弱き者のためのペシミズム」であると言える。
ショーペンハウアー哲学をキリスト教思想の伝統を受け継いだ一種の「宗教」として解釈し、西欧思想・文化史に新たな視座を提供した渾身の書籍。
本書からは哲学思想の分野(ニーチェ、ハルトマン、マインレンダー、ケーベル、ドイセン、ウィトゲンシュタイン)、文学の分野(マン、ケストラー、カフカ、トルストイ、ヘッセ)、音楽の分野(ワーグナー、プフィッツナー)におけるショーペンハウアーの救済論の影響を深い意味で読み解くことが可能となる。
付録として、ショーペンハウアーの主著『意志と表象としての世界』の邦訳文献を網羅した詳細な一覧を収録。
【目次】
序論
第一節 ショーペンハウアーにおける哲学と宗教の弁証法的関係
「学問」・「芸術」としてのショーペンハウアー哲学/「宗教」としてのショーペンハウアー哲学/ショーペンハウアーの宗教論/哲学と宗教の関係/「宗教としての哲学」における比喩の役割
第二節 ショーペンハウアー受容と解釈の歴史
ショーペンハウアー哲学の解釈法の分類/①規範的解釈/②記述的解釈/③価値論的解釈/(一)「ヴァイゲルト-ベッカー論争」/(二)ニーチェのショーペンハウアー解釈/(三)ニーチェ以後の規範的解釈の歴史/(四)近年における記述的解釈の復権・再評価/①「宗教としての哲学」=規範的解釈/②「学問としての哲学」=記述的解釈/③「芸術としての哲学」=価値論的解釈/ショーペンハウアー哲学の性格と解釈の区分のまとめ
第三節 本書の課題
(一)ショーペンハウアー自身が「宗教としての哲学」=規範的解釈を支持していないとする批判にどう答えるか/(二)「宗教としての哲学」=規範的解釈は意志実体主義であるとする誤解をいかに解消すべきか/(三)従来の通俗的なショーペンハウアー像をどう超克するか
第四節 本書の構成
緒章 概観と展望
第一節 「新プラトン主義的キリスト教」という背景
第二節 (a)「キリスト教」という背景
第三節 (b)「新プラトン主義的」という背景
① 「一/一者」・「一性」/②「発出」・「流出」/③「還帰」・「向き直り」
第Ⅰ部 「一/一者」・「一性」の思想
――「真の批判主義」・「より善き意識」からの「意志形而上学」の誕生――
序
第一章 神学者シュライアマハーと無神論者ショーペンハウアー
はじめに
第一節 シュライアマハーの「キリスト教時代の哲学史」講義(一八一二年)
シュライアマハーの学問体系における哲学史の位置付け/テクストの問題/シュライアマハーの中世スコラ学理解/シュライアマハーの「弁証法」講義
第二節 哲学と宗教
哲学と宗教における「神」概念/超越論哲学をめぐる見解の相違/哲学者と宗教者の資質
第三節 「真の批判主義」から「より善き意識」へ
神なき超越/神の存在証明の不可能性
小括
第二章 ショーペンハウアー哲学における「一者」
はじめに
第一節 若きショーペンハウアーの新プラトン主義受容
第二節 「より善き意識」の思想の問題圏①
「知的直観」と「より善き意識」/「エペクタシス」としての「より善き意識」/「より善き意識」の「存在形而上学」的性格
第三節 「より善き意識」の思想の問題圏②
「根拠律」の彼岸/新プラトン主義との思想的類縁性/「存在形而上学」からの脱却
第四節 「一なる意志」の形而上学
「一性形而上学」の成立/「一なる意志」からの流出論的な説明/「善」・「最高善」の捉え直し
小括
内容説明
意志の否定へ。ショーペンハウアーの「意志の否定」は生存を放擲し否定するようなものではなく、むしろこの世での生存をより高い次元において肯定し、苦しみからの真の救済をもたらすものであった。ショーペンハウアー哲学をキリスト教思想の伝統を受け継いだ一種の「宗教」として解釈し、西欧思想・文化史に新たな視座を提供した渾身の書籍。
目次
第1部 「一/一者」・「一性」の思想―「真の批判主義」・「より善き意識」からの「意志形而上学」の誕生(神学者シュライアマハーと無神論者ショーペンハウアー;ショーペンハウアー哲学における「一者」)
第2部 「発出」・「流出」の思想―「底無き意志」の客観化、「大いなる神秘」としての世界と個体(ベーメとショーペンハウアーの世界創造論;ショーペンハウアーにおける「個体化の原理」の問題)
第3部 「還帰」・「向き直り」の思想―「意志の否定」による救済と一なる意志の「自己認識」(ショーペンハウアー哲学における人格性の位置づけ;ショーペンハウアー美学と宗教論における「聖人画」の意義;アッシジの聖フランチェスコを通して見たショーペンハウアーの「意志の否定」論;ショーペンハウアー研究の更なる新視覚を求めて;補論1 明治大正期におけるショーペンハウアー哲学受容と翻訳の問題―西周「百学連環」から現在までの軌跡とともに;補論2 ケーベルのショーペンハウアー研究―姉崎正治とエドゥアルト・フォン・ハルトマンとの関わりから)
著者等紹介
堤田泰成[ツツミダヤスナリ]
1987年生まれ。上智大学大学院文学研究科哲学専攻博士後期課程単位取得退学、博士(哲学)。日本学術振興会特別研究員(DC2)、上智大学外国語学部特別研究員(PD)を経て、上智大学文学部非常勤講師。第2回西周賞(2019)、第12回宗教哲学会奨励賞(2025)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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