内容説明
2000年代に入り認知症への関心が高まりを見せる中で、認知症の本人たちが声をあげ、様々な新しい試みがなされている。認知症社会を生きるわれわれは、ここでいったん立ち止まり、これまでなされてきた介護やケアなどの諸実践を振り返り、未来の希望をひらくために今何を考えるべきかを問わなければならない。これまでおこなわれてきた介護・ケア実践の中で、認知症の理解と包摂はいかに試みられてきたのか。病いの「進行」にともなう困難やジレンマに対して、認知症本人による自らの「思い」の語りはいかなる意義をもっているのか。
目次
序章 認知症社会における社会学的課題
第1章 理解と包摂をめざして―ケア・介護の対象としての認知症理解へ
第2章 医療は敵なのか味方なのか―ケア実践による医療批判を考える
第3章 どのような「思い」によりそうのか―映像資料に見る本人の「思い」
第4章 その人すべてを包摂することはできるのか―あるデイサービスにおけるケア実践のジレンマ
第5章 本人の「思い」の発見は何をもたらすのか―「思い」の聴きとり実践から
第6章 認知症の本人たちの声はどのような未来をひらくのか―リアリティの分断に抗することに向けて
終章 希望をひらくことに向けて―「進行」をめぐる諸実践への注目
補論 認知症当事者本がひらくもの―二〇一七年の著作群を中心に
著者等紹介
井口高志[イグチタカシ]
1975年山梨県生まれ。2006年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。信州大学医学部保健学科講師、奈良女子大学生活環境学部准教授を経て、東京大学大学院人文社会系研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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