内容説明
聖地・祝祭としてのイベント、そしてアニメ「聖地巡礼」―誰もがオタクに宗教的熱狂を感じ取りながら、宗教研究はそこへ踏み込まずにいた。情報技術と宗教の融合から、オタク・コミュニティの緩やかな連帯と救済まで、宗教研究者による初めてのオタク論。
目次
「オタク」概念の宗教学的展開
第1部 メディア空間における宗教の可能性(メディア空間における宗教的世界の構築―CMC空間のリアリティ構成をめぐって;CMC空間における「つながり」―『serial experiments lain』を題材に)
第2部 オタクの「聖地」と「祭り」(秋葉原という「聖地」―メディア空間へ訴求する場;同人誌展示即売会という「祭り」)
第3部 作品舞台への「聖地巡礼」(アニメ「聖地巡礼」の興隆;コンテンツがもたらす場所解釈の変容―埼玉県鷲宮神社を中心に;フレームから浮かび上がるリアリティ―秩父札所十七番定林寺を中心に)
新たな場と共同性を求めて
著者等紹介
今井信治[イマイノブハル]
1982年群馬県高崎市生まれ。2005年筑波大学第一学群人文学類卒。2015年筑波大学大学院人文社会科学研究科哲学・思想専攻修了。博士(文学)。専門は宗教社会学。立教大学兼任講師、東京家政大学・東京工芸大学・大妻女子大学非常勤講師、國學院大學PD研究員、宗教情報リサーチセンター研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mittsko
8
力作!でも、宗教論として少々食い足りない、という感想です…(´・ω・`) 「オタクの社会学 a la 宗教」といった趣きの一冊ですから、オタクの批評クラスタやら、社会学界隈やらにこそ、よりよく受容されそう(ただし、理論構築のところで、社会学者からは指摘が出るかも) 「オタクって宗教だよね、って一体どういうこと?」… 私的には、この問いには強い関心をもっており、実際、本書上梓前に著者を招いて研究会を開催したぐらいなのだが、著者の機能主義的宗教論には、残念ながら不満をもってしまうのでした2021/07/09
センケイ (線形)
7
穏当なトーンで、ICT 技術との関わり、コミケと祭典の関係性、聖地巡礼と包括的に語られる。特に前者2つの視点は斬新で面白い。また、改めて3パートを通して振り返ると、人間関係を結びつけるある種の均質性というのがあり、しかしながらその均質なコミュニティ内だけで閉じずに別の物語とも交錯する様子が垣間見えてくる。祭典についてはその準備時点から始まるという見方はおそらく昨今の多種のイベントとも通じる。危うい迫力の文体でない点はある意味では予想外だったが、オタクを取り巻く自分の興味にはむしろいっそう結びついた。2020/02/29
ひょ24
4
社会学の理論を元に,情報と消費と場所というキーワードと共にオタク文化の宗教性について論じている1冊。たまたま図書館で見つけて読んでみたら思いのほか面白かった。典型的なオタク像を形作った方々についても本書を通して知ることができた。コミケというものにも是非いってみたいものだ。2018/11/06
古戸圭一朗
2
ICTの発達を通じて形成された、CMC空間というコミュニケーション領域。そこではどのようにリアリティが構築され、そして現実と関わり、現代社会における「共同性」を作り上げていくのかが、オタクないしオタク文化を例にして描写される。CMC空間と現実は、二項対立的にとらえるべきではなく、そのいずれもリアリティを持ち、相互作用的にお互いの場所性が変容していく姿を具体的に論じているのが面白い。2020/07/03