内容説明
西洋近代の人間中心主義を打破して人間と動物を隔てる種の壁を破ったシンガーが人命至上主義の壁を破る生命倫理に挑戦。
目次
第1部 シンガーの哲学(哲学者よ、ふたたび出番である;ウィリアム・ゴドウィンと公平主義倫理の擁護)
第2部 人命の脱神聖化(個体、人間、人格―道徳的地位の問題;IVF(体外受精)技術と潜在性にもとづく議論
人間の生命の脱神聖化
生命の神聖性の倫理は終末期を迎えているか)
第3部 生命の選択(医療資源の配分と生命の価値の問題;医療の配分におけるQALYと二重の危険)
第4部 生命の区別(なすべきか、なさざるべきか;人種による区別は恣意的なものか;すべての動物は平等である)
著者等紹介
浅井篤[アサイアツシ]
1962年愛知県出身。藤田保健衛生大学医学部卒。医学博士(京都大学)、生命倫理学修士(モナッシュ大学)。熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野教授
村上弥生[ムラカミヤヨイ]
1961年神奈川県出身。東京外国語大学大学院国際学修士、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。倫理学専攻。東京外国語大学、法政大学兼任講師
山内友三郎[ヤマウチトモサブロウ]
1933年秋田県出身。京都大学文学部卒。哲学(環境倫理、比較思想)。大阪教育大学名誉教授、豪モナッシュ大元名誉研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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大道寺
4
生命倫理についての論文集。シンガーの立場は人命を神聖視しない。それは「人」を神聖視しないことでもあるし、「命」を神聖視しないことでもある。中絶に関する道徳的な議論では、人命の神聖視を前提とする場合、「胎児はいつ人間と見なされるようになるのか」が問題になるが、その前提を置かずに考えれば「殺すことが間違っていると考えられるような存在の特質とは何か」が問題となる。その問いをシンガーが論じていくと、一方では中絶や積極的安楽死の肯定が、もう一方では動物解放論が、帰結として出てくることになる。(1/2)2013/06/01
きぬりん
3
シンガーの論文集の抄訳。訳出は生命倫理関連の論考を中心とするが、倫理的問題に対する哲学者の役割を論じた論考や、現代の行為者中立的道徳に対する行為者相対的道徳からの批判がつとに18世紀末のゴドウィンの見解をめぐる論争に見られることを示す論考、人種による区別の不正さをその恣意性ではなく帰結主義的考慮に基礎づける論考(ルッキズムにも適用可能?)、有名な「すべての動物は平等である」も収録されている。QALY最大化による医療資源配分を理論的には擁護しつつも、現実的には否定される可能性を示唆している点が面白い。2025/10/31




