内容説明
本書は、いまだに根強い差別と偏見の中にある「精神分裂病」という事態、あるいは「精神分裂病者」という存在が、心理療法という臨床心理学的方法によっても、充分に変化し、治療成果が上がるものであることを具対的な事例を通して示すと共に、そのための実践的な心理療法的援助技法の確立と、それを支える臨床的な心理療法的基本視座の形成に、少しでも寄与、貢献しようと志すものである。
目次
精神分裂病者に対する心理療法研究の概観
第1部(その一) 精神分裂病者に対する心理療法的援助技法としての「枠づくり」(心理療法家と精神科医との使い分けの出現とその心理療法的意義―使い分けの発見から「枠づくり」技法へ;精神分裂病者に対する心理療法的援助技法としての「内枠づくり」と「外枠づくり」;精神分裂病者に対する心理療法的視点としての「枠としての身体性」―「枠としての身体性」の危機と崩壊にみる「枠づくり」論)
第1部(その2) 精神分裂病者に対する心理療法的援助技法としての「妄想の物語性を聴くこと」(「妄想の物語性」の理解に基づく精神分裂病事例の心理療法―物語としての「内なる女性の死」をめぐって;精神分裂病者の「妄想」を聴くことの意義とその心理療法的援助技法―ユング心理学的方法論について;精神分裂病者の「妄想」に対する心理療法的援助)
第2部 精神分裂病者に対する援助技法を支える心理療法的基本視座(心理療法家にとっての精神分裂病問題―援助技法を支える心理療法的基本視座の考察 その1;心理療法過程における「容器の中での腐敗」について―援助技法を支える心理療法的基本視座の考察 その2)
総合的考察 重篤な精神病者への心理療法的援助技法と心理療法的基本視座
著者等紹介
渡辺雄三[ワタナベユウゾウ]
1941年名古屋市に生まれる。1965年名古屋大学工学部中退。1965年佐藤神経科病院勤務。1969年松蔭病院勤務。1987年松蔭病院に勤務の傍ら『渡辺雄三分析心理室』開設。1991年「臨床心理士」資格取得。1994年松蔭病院を退職し『渡辺雄三分析心理室』にて開業心理療法家として分析的心理療法に専念。2000年人間環境大学人間環境学部教授(臨床心理学)。2001年学位論文「精神分裂病者に対する心理療法の臨床心理学的研究」にて社会学博士
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