出版社内容情報
津波で、家も家族も失った少年。その少年を暖かくつつみ、命に対する深い智恵と愛情をもって再生を助ける人々──。日本を舞台にして、ノーベル賞作家パール・バックが描いた死と再生の物語。
「大きな苦しみを背負ってしまった人を、どうしたら支えられるのか」という問いに対する明快な答えを、パール・バックがいま、時を越えて私たちに教えてくれる。
『ごんぎつね』の黒井健の、あたたかい、やわらかなイラストは、私たちの心にゆっくりとしみこみ、生きていることの喜びを静かに伝えてくれる。
死が身近でなくなったいま、私たちは大切な人を失って絶望に沈む人を癒す智恵を失いつつあるのかもしれない……。
この日本についての物語は、私の思い出から生まれたものです。かつて私は、海辺の丘の中腹にある小さな日本家屋に住んでおりました。ある夏、津波がやって来て、浜辺の村が流されたのです。ですから、キノとジヤのこの物語は、本当にあった話だといえるかもしれません。──パール・バック
家を失い、愛する家族を失った人々を前に、かける言葉もなく立ちつくすだけの私たち。死を身近に感じることがほとんどなくなったいま、私たちは、大切な人を亡くして絶望にあえぐ人々をつつみ、支えるだけの智恵を失ってしまったのかもしれない。
死ぬこともできないほどの絶望を抱えながら、人はどのようにして生きる力を取り戻していくのだろう。どうしたら私たちは、それを手助けすることができるだろう。
地震大国日本に住み、何度も地震やつなみに襲われている私たちは、またいつ何時、逆らいがたい力に愛する者を奪われるかしれない。地球という星の圧倒的な力のまえで、人間が為しえることは本当にわずかなことだけだ。
しかし、それでも命は受け継がれ、脈打って流れゆく。この本を読み終わったとき、私たちのなかにあふれるのは、はかない命を生きる私たち人間に対する静かな共感と深い愛である。人間は哀しい。けれど、人間はすばらしい……。
内容説明
ある日突然村を襲った大津波によって、家も、家族も奪われ、独りぼっちになってしまった少年ジヤ。しかし彼は、周囲の人々の暖かい愛情に包まれて成長し、やがて再び海に立ち向かってゆくのだった…。ノーベル賞作家パール・バックが日本を舞台に描いた、大自然と共に生きる人々の生と死、そして愛を、優しく澄みきった、情感溢れる黒井健のイラストレーションにのせて贈ります―。
著者等紹介
バック,パール・S.[バック,パールS.]
1892年ウェスト・ヴァージニア生まれ。生後3か月で中国に渡り、18歳まで、中国で育つ。その後アメリカの大学に入学するが、再び中国へ戻り、執筆活動を始める。31年『大地』でピューリッツァー賞受賞。38年ノーベル文学賞受賞。1973年死去
黒井健[クロイケン]
1947年新潟市生まれ。新潟大学教育学部卒業後、学習研究社に入社し、2年間絵本の編集に携わる。退社後フリーのイラストレーターになり、83年第9回サンリオ美術賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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とよぽん
ちはや@灯れ松明の火
Maiラピ
コニコ@共楽
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく