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内容説明
トルコの役人アガスの小姓ユスファーキ殺しの真犯人は、アガスの護衛だったことが判明し、リコブリシ村は救われたかに見えた。一方、キリスト受難劇に選ばれた者たちは、あたかもその配役の人物に同化するかのように神を求め、難民を救うため長老たちと対立していく。ユダ役のパナヨタロスの入れ知恵で、村の司祭グリゴリスはキリスト役の羊飼いマノリオスを教会から破門する。サラキナ山の荒地に住み着いた難民を率いるフォティス司祭は、自分たちの生存のために奔走するがうまくいかず、リコブリシ村とサラキナ山難民の対立は決定的となる。そしてついに、キリスト役の羊飼いマノリオスに受難が…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
em
19
「まっとうな人間、善良な人間の心は地獄だ!地獄なんだ。そして、その中にはあらゆる悪魔がひそんでいる」。舞台はとあるギリシャの村。聖週間に行われる受難劇で、キリストや使徒に配役された村人たち。トルコ軍に追われてやってきた難民たち。物語はまさに劇のように、書き割りを背にしたように進んでいく。カタリ派やアルビジョア十字軍について何かしら読んだことがあったら、彼らのことを思い出すかもしれない。光り輝く神々と大いなる思索を生んだギリシャ。時代を遡って知るほどに、文明にも老いがあるのだろうかと思わずにはいられない。2018/12/18
tieckP(ティークP)
4
キリストと重なるマノリウスと、これに対置された反キリストのグリゴリス司祭がはっきりとした物語の対立軸になるところ、同じく俗物とは言え裕福な村長と、キリスト教に目覚めて私財を捨てようとする息子ミヘリスの愛憎関係にはウェットなところがあって、ロバに執着するヤナコスや、家族が気になるコンスタンディスと並び、より文学的である。ユダであるパナヨタロスについては、最後に劇的に裏切り、後悔するという物語的においしい用い方をしなかったのが意外ではあり、彼がマノリウスに貼るアカというレッテルも装置として安っぽい気はした。2020/08/18
姫苺
0
上巻から続く。展開の読めなかった作品だけど、最終的に受難劇になっているのがすごい。ただ、誰もが聖人になれるわけではないということを、最終章の使徒役の3人が表現しているのかもなぁと思った。2012/02/06
Quijimna
0
たらふく食べて肥え太った司祭と、トルコ軍に追われ彷徨の後に岩山に拠った難民集団の飢えた司祭。あまりにも対照的な二人の対立に軸足が移り、神義論的な展開に。近代のギリシア人の自己確立の苦悩をもそこには秘めて、壮絶なラストへと登り詰める。カダレとはまた別の意味で、世界の中で自民族の立ち位置を模索する作家の格闘を見る思いだった。★★★★☆2011/06/29
futhork
0
下巻の冒頭からとんでもない展開。イタリアオペラのような恋愛譚と思って一気呵成に読んだ。2023/01/14