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内容説明
村から村へ、自由気ままに幌馬車で移動して暮らすジプシーの集団(シャトラ)。だが、戦争は彼らを放ってはおかない。すべてのシャトラに政府の命令が下り、ヒム族長のシャトラも、大きな河の向こうへ追い立てられる。人々は死人を見るように、彼らを見送る。ヒム族長は、ともすれば崩れようとするシャトラの良き伝統と慣習を必死に守ろうとするが…。戦争による集団の解体と、ラストに訪れる再生へのかすかな希望。作者スタンクが、第二次世界大戦下のルーマニアの漂泊ジプシーに材を取って描いた壮大な物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベイス
56
ナチス支配下のルーマニアのシャトラ、今でいうロマの人たちの運命を描いた作品。理不尽に戦争に巻き込まれ、不毛の土地への移動を命じられ、やがて古来守られてきたロマの掟が破られ集団が内部から瓦解していく様が、短く印象的な表現の繰り返しによって描かれる。彼らの慣習、自然観、出来事をありのままに受け入れる人生観、それらはことごとく踏みにじられる。「お前らは戦争に用がなくても、戦争の方でお前らに用がある」。憲兵のこの言葉に、戦争の本質が隠されている。2023/01/23
蛇の婿
7
読んでいるうちにどこかへ行ったり、それでなくともハードカバーなので出先で読むのに向いてなかったりで、なかなか読むのに時間がかかってしまいました。第二次大戦ころ、ルーマニアにおいてジプシーを不毛の荒野に追いやり、その場から離れるのを禁じるという行為が行われていたらしく、これは本文に明記はされていないものの、そういったジプシーの一族(シャトラ)を題材にとって描いた小説の様です。2023/12/20
印度 洋一郎
3
第二次大戦下、ドイツの同盟国であるルーマニアで行われていたロマ民族のジェノサイドに基づき、ロマ達の視点から描写した小説。作中では「ロマ」とか「ジプシー」という言葉は一切無く、「浅黒い人々」としか呼ばれない。「シャトラ」と呼ばれる、数家族が共に暮らす集団が事態もわからない中、「川向こうの平原」へと追いやられていくが、その道中出会う人々が皆「自分達が死人であるかのように見る」ことで結末が暗示されていく。「何も信仰せず、自分達だけを信じて生きる」ロマ達の独特な価値観(自分には理解出来ないことも)が全編に横溢する2024/05/18
kinoko-no
2
ジプシーのホロコースト。2010/09/24