内容説明
慶応四年(一八六八)七月二十五月、長岡藩総督河井継之助の采配のもと、長岡藩兵八百余名は、魔蛇が棲むという八町沖を徒渉、敵中に潜入して長岡城を奪い返した。夜行暁戦、故城へむかって各隊が疾駆突戦する。その作戦の見事さは、継之助の才腕によるものだった。奇謀の計によって、薩長の野望を砕こうとする継之助。大兵を擁し、維新の大望をふりかざす山県狂介(有朋)ら。北越の戦いは、天下分け目のいくさとなった。そのハイライトともいうべき、長岡城奪還戦の十六日間を克明に追う。そこには東軍陣営、とくに米沢藩と長岡藩の葛藤、薩摩・長州藩兵ら西軍諸藩兵の戦いの実態、焦土作戦による住民の悲哀、新潟陥落による長岡再落城の様子、そして、ふるさとを奪い返し、城下の土を踏んで涙する長岡藩士の様子が描かれている。戊辰戦史上、まれにみる激戦の実相に迫る。
目次
序章 風雲の魔王
第1章 緑風と赤雨
第2章 奇謀の転機
第3章 杳々の黄昏
第4章 阿修羅の襲撃
第5章 死闘する諸兵
第6章 西兵、起立す
第7章 魔神との別れ
第8章 雷神現る
第9章 勝利に感涙す
第10章 孤城の占拠
第11章 風、蕭々として
第12章 捨身しうる者
付録 八町沖渡行作戦参加 長岡藩兵・隊別名簿