内容説明
昭和初期、追われゆく先住アイヌ民族との交流を通して、その生活の歓びと悲哀を情感あふれる筆致で描いた長見義三の文学世界。アイヌの学校が廃止されるという。コタンの顔役バロオはこれを存続させるため奮闘するが…。歴史的・現実的なアイヌ民族の問題を浮き彫りにした表題作ほか二篇収録。
感想・レビュー
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AICHAN
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図書館本。表題作ほか2編。著者の長見義三は昭和十年代に若くして芥川賞の候補に挙げられるほど優れた作家だったが、戦争の悪化に伴って北海道の穂別に疎開して筆をおく。この小説はそれから50年も経ってから刊行されたもの。舞台は北海道のアイヌコタン(部落)。旧土人法(アイヌは土人とされた)の下で生きていたアイヌの人々と和人たちとの生活が、臨場感溢れる文章で綴っている。読み終えて、数年前に旧土人法は撤廃されたものの、アイヌの人々は今になっても蔑視されていることを思い、先住民族なのにと思うと哀しくなった。→2025/02/05




