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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zirou1984
59
どこの国の言葉かもわからない、言葉の仕組みもわからない。その町はどこにいっても人だかりなのに、エペペの言葉を理解しない者には一人残らず冷淡だ。いま、間抜けな言語学者ブダイの勇敢な冒険がはじまる!エペペという単語の発音の快楽だけでご飯三杯はいけるよねとかどうでもいいことを考えつつ、この迷路のような世界で途方に暮れるのは悲しくもなぜか楽しい。著者はハンガリー出身とのことで、やはりこうした暗いユーモアはどこか東欧の匂いを感じさせる。不条理を笑えない人には、条理の喜びも伝わることはないのだろうとふと思う。エペペ!2015/02/16
燃えつきた棒
26
言語学の専門家ブダイは、言葉が通じない国に迷い込んでしまう。 そこでは母国語のみならず主要な外国語も全く通じないのだ。 かくして彼は、様々な悪戦苦闘を繰り返しながら、街を彷徨い歩く。 カフカの『城』の世界が更に疎外の度を深めたような物語だ。 2014/02/26
田氏
22
言葉もボディランゲージも伝わらない国に、よりによって言語学者が迷い込む。そもそもこの国にはおそらく「他言語」という概念すらないようで、バベルの塔が崩壊する前の世界だという書評の指摘が実に腑に落ちる。建築中の高層ビルが階数を増していくところなんか、まさにその暗喩に見える。著者が言語学の博士ということもあり、未知の言語を解読するプロセスについてもページは割かれているが、それよりも前面に描かれているのはおどろおどろしいまでの群衆(マス)。そこから異物としてはじき出され、あるいは同化していくことの普遍的な恐怖だ。2019/07/01
ふるい
18
おそろしい話だけど面白かった。こんな小説があったとは。言葉も身振りも通じず、人々はみな不親切、あらゆる所に行列が出来、罵倒され揉みくちゃにされる、悪夢のような謎の都市に偶然から閉じ込められてしまった言語学者ブダイ。"エペペ"とは彼がその街で唯一心を通わせた女性の名前であり、主人公が陥った不可思議な状況そのものを表してもいる。自分がブダイだったら1日目で何もかも諦めちゃいそうだなと思った。2017/11/01
ぽち
12
【世界文学ワンダーランド】1970年ハンガリー産。数十カ国語を研究する言語学者が意味も発音も構造も全く理解不能な言語が跋扈する国に迷い込み彷徨する。カフカ『城』に代表される「目的に辿り着けない系」と評していたレビューを見た記憶がある。短いセンテンス中心の乾いた文章で、多くを風景/状況描写が占める割に読みやすい。没入感も最高度。『城』に比べると非リアリズムの荒唐無稽な状況が延々続く、ストレンジ・フィクションとしても最高に楽しめる。解説を読むまで気付きもしなかったのだけど、これは当然ディストピアものでもある。2022/09/11