内容説明
日本の行く末を憂え、老骨に鞭をうって太平洋戦争終結に全精魂を傾けた気骨の男を描く人物伝―日清日露の最前線で戦って武勲をあげ、水雷戦の権威となり、またロンドン海軍軍縮条約調印を支持し、過激派青年将校たちの標的と捉えられ、二・二六事件において危うく一命をとりとめた“運の強い男”の素顔をつづる。
目次
第1章 関宿の人々(泉州の陣屋;月見草の花;関宿町にて)
第2章 砲弾の中(江田島の四季;ウォシング・シーメン;山本権兵衛という人;「鳥海」での出来事;上崎上等兵曹の割腹;敵艦襲撃の日;イギリス艦隊と士官;煙草の魔力)
第3章 生と死の間(神仏の御加護;加藤大佐の発案;微妙な人心;ウィルヘルム軍港;最後の言葉;世界戦争への糸口;抗日の渦)
第4章 雪の日の惨劇(二・二六事件の〓末;生き残った鈴木侍従長;身代わり犠牲;ハル・ノート)
第5章 終戦への道(老首相の気概;新聞発表のウソ;消えた勝利の夢;特攻の精神;原子爆弾とソ連参戦;怒涛の中の太陽;御前会議記事録)
著者等紹介
小松茂朗[コマツシゲロウ]
大正5年、長野県に生まれる。昭和18年、中央大学法学部卒。読売新聞社入社。東京新聞に転じ、社会部記者。19年、応召。満州孫呉電信隊に入隊。終戦にて、シベリアに抑留される。23年、帰還。東京新聞へ復社。社会部記者、支局長をへて社会部次長。52年、日本作家クラブ賞を受賞。平成10年12月、歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鐵太郎
12
単行本としては平成7年に刊行された書籍の、2022年の文庫新装版。新しい鈴木貫太郎という軍人・政治家の一代記としてちょっと期待したのだけれど、うむう。召集された新聞記者なのだそうだが、文章が不味い。たとえば、唐突に上崎上等兵なる人物の割腹を描き、数ページ後に同じ話を繰り返してその事件を語り、さらに数ページ後にその話を繰り返して思いを語るなど、誰が編集しているのかわからないが子供の作文じゃあるまいしと思ったもの。筆致も感情的で自分本位。この希有な海の男を描くのに、なんたる見当違いの描写と思われる所多数。2022/09/29