内容説明
兵士の日常を丹念に描き、温かく深い感動を伝える戦記文学の傑作短篇/第46回直木賞受賞作品。
著者等紹介
伊藤桂一[イトウケイイチ]
大正6年、三重県生まれ。昭和13年より終戦まで三度にわたる満7年の軍隊勤務。上海で終戦。陸軍伍長。戦後十数年、出版社の編集部勤務。昭和37年、「螢の河」で第46回直木賞、昭和58年、「静かなノモンハン」で第34回芸術選奨文部大臣賞及び第18回吉川英治文学賞を受賞。昭和60年、紫綬褒受章。芸術院会員。平成28年10月、歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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東森久利斗
4
戦場には不似合いとも思える抒情的で静かな情景。一編の詩のよう。自らの戦地での過酷な体験をもとに、生活者の日常のドラマのように淡々と巧緻な文章で綴る。戦争への悲壮感、イデオロギーやメッセージ性とは無縁な異色の戦争部学。文春文庫にて読了2021/07/19
gibbelin
3
「軍旅」という極限の日常は、まあ想像だけでは書かれんわけである。2017/01/27
こらった
2
『螢の河』戦場で芽生えた友情の話。『鵜を撃つ』集中一、二を争う秀作。『黄土の記憶』キリスト教の村、春蘭を見つけた男の末路とは。『黄土の牡丹』女をめぐる男と男の争いを描く。意外な結末。『雲と植物の世界』馬の話。2017/02/05
ガオ
1
× 太平洋戦争時の中国大陸での筆者の体験をもとに書かれた短編小説集です。軍隊に身の置き所がない兵士の苦悩と、その苦悩から脱出する姿が描かれています。 風景描写には心が惹かれましたが、小説に没頭することができず、流し読みをしてしまいました。 陳腐な言い方ですが、やはり、戦争は嫌ですね。 少なくとも、自衛隊の皆さんが、実際の戦闘に巻き込まれることがないことを願いました。2020/02/01
CEO MOT
0
兵士の日常を戦場あるいは内務班勤務の視点から描いている。戦場は死と隣り合わせの非日常な世界であり、敵に囲まれ圧倒的に不利な状況下においても何か達観の域にある描写に、兵士としての覚悟、諦めともとれる心情が痛いほど伝わってきた。また中国奥地の廃廟に敵兵が落書きした詩に、新たな詩を書き加えるシーンとその敵兵が戦死したことが分かったときの複雑な面持ち。直木賞受賞作だが、純文学に近い小説である。 2023/10/18