内容説明
日本の敗戦による飢餓とインフレ時代に遺書を託して戦場に消えた戦友の最期を配達する一兵士の見た戦争のつめあと。西山民次の中に燃えつづけた怒りの炎は生前の有馬のなかにも燃えていた。その怒りに促されて書きつづけた有馬の兵隊小説について多くの文芸評論家は「戦争体験の風化に抵抗する作品」と評した。
著者等紹介
有馬頼義[アリマヨリチカ]
大正7年2月、東京に生まれる。学習院初等科より成蹊高校に進んだが、野球に熱中して退校となる。早稲田第一高等学院に転じたが、小説を書いて稿料を受けとったことがもとで、放校処分をうける。徴兵延期の特典を失い、昭和15年1月、召集されて満州に渡る。18年4月、除隊。帰国して同盟通信記者となる。隣組長、防空班長をつとめながら、反戦小説を書きつづけ、終戦を迎える。昭和29年、「終身未決因」により第31回直木賞を受ける。昭和34年、「四万人の目撃者」で探偵作家クラブ賞を受賞。昭和55年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takj
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13人分の遺書が1つ1つの小説として感じた 1作品ごとの社会情景があり とても興味を引いた 著者の有馬頼義氏にも興味を得た 渥美清の「あゝ声なき友」映画のもと?2021/08/22
tecchan
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激戦地に向かう13人の戦友から遺書を預かった、ひとり病気のため内地送還となった主人公。8年かけて遺書の宛先を探す旅。妻或いは妹、母など。戦中、戦後の生きていくのも厳しかった時代、待ち続けた者にも時代の影が。戦争の爪痕、戦争への怒りが強く感じられる作品。2020/05/23
zatugei
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兵隊やくざシリーズを見ている。以前、一度読んでいるが、この際、これも読んでおこうと。たしかこれも映画になっていたと思うが、細かいところは忘れている。終戦直後から、昭和30年代までの話。戦後をどこまで引っ張るのか、考えさせられることが多い。2019/02/04