内容説明
敗色濃くなった昭和十九年末に就役、海上護衛戦の尖兵として休むことなく走りつづけた海防艦の航跡を綴る―高雄で討たれず、香港で沈まず、室蘭で生き残り、終戦後も引揚艦として南方各地の邦人、復員兵の輸送に従事した奇蹟の艦の記録。爆雷員として乗り組んだ若き水兵が描く壮絶、非情なる護衛戦闘の実態。
目次
第1部 乗艦するまで(わが古里;幼年時代;海軍志願 ほか)
第2部 命を削る護衛戦(第二〇五号海防艦の乗員となる;対潜訓練隊;戦局 ほか)
第3部 戦い終わって(終戦;Y中尉の自決未遂;軍艦旗焼却 ほか)
著者等紹介
江口晋[エグチシン]
大正13年5月、新潟県に生まれる。昭和19年2月、舞鶴海兵団に入団、対潜学校をへて同年11月に第二〇五号海防艦第2分隊爆雷員として同艦乗り組み、船団護衛の任務につく。終戦後は2度の引揚輸送に従事し20年12月、復員。海軍水兵長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーしー
2
戦況が逼迫し日本が劣勢に追い込まれつつある昭和十九年に竣工して幾多の対潜哨戒任務や敵機の空襲のなか戦死者を一人も出さずに終戦まで戦い抜いた一隻の海防艦の話。こういった一兵卒として前線で戦った人の体験談って独特の生々しさやリアリティを伴ってて、不思議と読んでて引き込まれる。ちなみに二◯五号は戦後中国に引き渡された後、座礁・放棄されたらしい。2016/03/30
エンジ
2
艦これ夏イベ中、通勤の行き帰りで読了。海防艦二〇五号は基準排水量745t、全長67.5mの小艦艇で、南は台湾フィリピン北はアリューシャン列島まで、敵の潜水艦が跳梁する海を船団を護衛しながら走りぬき、戦死者を一名も出さなかった強運の船だ。しかしその周囲では多くの僚艦が潜水艦や航空機に無残に撃沈されている。一水兵として乗艦した著者の目線で生々しく語られる海での戦いと戦争末期の様子に心を強く揺さぶられた。最終章、著者が故郷の家で布団に寝転がった時、不覚にも涙してしまった。ところで写真見ると、海防艦かっこいいな。2014/08/28
tora
2
800t足らずの小型海防艦の海戦記。ドラマティックな展開はない、一般兵の戦争体験記録である。そのとき感じたことをそのまま記述したような文章で脚色は少ないように思う。それゆえにリアルに感じられる作品である。2010/04/08
奇想天
0
これも海防艦つながりで読んだもの。 陸軍と海軍どちらもせつない。2015/05/09