内容説明
『成否にかかわらず突入を断行すべし』海軍首脳部の意向に動じることもなく、米軍の状況と濃霧のために、第一回目の突入を断念して引き返し、臆病の陰口をたたかれながら、『帰ればもう一度来ることができる』と再突入の時期を待ち、みごとに一兵も損じることなくキスカ島守備兵全員を救出した前線指揮官の生涯。
目次
明治の将器
天命感知
重巡「三隈」「最上」救助異聞
決断「まっすぐいけ」
絶対絶命の死闘
信仰と戦運
結婚と震災救援
長官米内光政指揮下の砲艦艦長
国内は大乱、中国は果てしない戦争
わが家にまさる憩所はなし
伏見宮元帥の天皇への直言
ドイツ軍の大敗を知らずに開戦
アッツ・キスカ占領と撤収開始
司令官は春風駘蕩の村長
突入か反転か
開運
連鎖の奇蹟現象
守備隊全員救出に成功
理の当然の連合艦隊崩壊
陸軍を大敗させた海軍の戦果発表
一人残らず救助する
戦争末期の連合艦隊司令部付
日本降伏時の信念
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
熱東風(あちこち)
2
戦中の活躍もさることながら、軽い驚きを覚えるのが、戦後の彼の態度である。誇るべき功を(隠すまではしなかったものの)、自ら自慢げに語ろうとはしなかった。こういう人も居るものだと感嘆。/将口泰浩氏の『キスカ島奇跡の撤退』にも述べられていたが、牟田口某のような、己の悪行を正当化しようと醜いまでに足掻いた意地汚い輩とは極めて対照的だ。2015/06/12
浅木原
1
こないだ読んだ『キスカ島奇跡の撤退』と同じ木村昌福中将の評伝。向こうが初心者向け、こっちが戦史に興味のある人向けかな。色んな資料を引用して比較検討するのがメイン。太平洋戦争に偏ってるけど内容は断然こっちの方が濃い。逸話や証言から木村中将の人物像を掘り下げるのではなく、戦争中の行動と戦果から有能な指揮官であったと評価する本なので、先に『キスカ島奇跡の撤退』読んでた方が入りやすいかな。熱い五十六disとか木村中将=有能の循環論法気味なところは引っかかるし、あんま読んでて楽しい本ではないけども。2014/05/15
長門たつた
0
著者が山本五十六を嫌うのはいいが、事あるごとにこき下ろすのはいかがなものかと思う。
たかしゃん
0
主人公木村提督の戦い比して、一般的な世界情勢や国内の軍人の政治の話が多く、入り込めなかった。また、阿川弘之の解釈を書く必要も余り感じられなかった。2020/05/22
青空のゆくえ
0
八月十五日に吹く風の木村昌福のイメージが強烈だったので、この本を読んだが、大東亜戦争の経緯が軸で、どうも木村の輪郭がボヤけた感があった。きすか撤退の一回目の失敗は木村が臆病風に吹かれたからという事で、二度目は上層部指揮官がついてきたというのは、木村のイメージが大きく揺らぐものがあった。本当の木村の実像は?今となっては知るよしもないが、僕は八月十五日の木村を信じたい。2018/06/10