内容説明
当時、私は「人生二十五年」と覚悟した。私は二十二歳の見習い士官だった。壮絶な戦場だった。人間の生命なんて、虫ケラ同然、命令絶対服従社会だ。戦場に送り込まれるために育った我ら大正十年代。砲煙弾雨と飢餓。これが本当の戦記なんだと思っている。なにを隠そう、これが戦争、これが戦場。
目次
テメエら一銭五厘
花の十二期
迎春花
南進千里
ゲリラうようよ
ルソンひとりぼっち
白衣の青春
修羅病棟
パラダイス航空寮
焦土縦横
安逸の谷間
敗走基地
飢餓陣地
幽鬼の群れ
救いの終戦
望郷キャンプ
こんな青春
著者等紹介
金井英一郎[カナイエイイチロウ]
大正11年、千葉県御宿に生まれる。巣鴨高商(現在の千葉商大)を卒業、昭和電工に入社。昭和18年、陸軍に入営し、野砲兵で初年兵を過ごす。19年、甲種幹部候補生として東京陸軍経理学校を卒業、陸軍主計少尉。ルソン島にて終戦を迎える。日本スキー指導者協会顧問。高度登山家集団名誉会員
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
donboo
19
軽い題名だが中身は重い。一人の青年士官の大東亜戦争末期のフィリピンレイテ島での戦記。三毛作できる現地では食料は現地調達すればと補給を軽視した結果が最悪の結末となる。作者の若かりし頃の実体験。終戦をレイテ島にて生き残った兵士達と喜ぶ姿にありがとうという言葉しかでない。2017/05/15
itosan04
7
映画「フルメタルジャケット」のような新兵訓練ものは大好きだけど、日本版で最も面白いのは、この戦記だと思う。新兵訓練場面もルソンでの「君の名は」ばりのラブロマンスも日本兵として規格外の大活躍。満州では慰安婦もでてくるし、ルソンでは「地獄の黙示録」のプレイメイトの逸話的な話まで出てくる。リアリズムに徹底した作者の目線が厳しい戦争を生き残る原動力になったことが分かる。凄い日本人がいたものだ。2016/10/25
Toshio Iwamura
4
約10年ほど前に読了。感銘を受け、当時あった著者のHPを通じてメールを出したら、ご本人から返信をいただきました。近いうちに会いたいと思っていたら、その後すぐに亡くなられてしまい、痛恨の極みです。かつての戦争の体験者は日一日と減っていっているという現実を突き付けられました。
dogu
1
軍隊で兵站・給養を担当する主計士官による戦記。内容も文章も他の戦記ではあまり見られない異色なもの。軽妙な文章だが中身は重い。2023/03/13