内容説明
艦長から水兵まで分けへだてなく、強い信頼の絆でむすばれた駆逐艦乗りたちの戦場―初陣の凱歌に湧いたジャワ、火炎と砲弾の雨に打たれたソロモン、そして、霧の中の遭遇戦アッツまで、克明に海戦の推移を描きつつ、勇気と実行力に富み、負けじ魂は人一倍強い下士官兵たちの胸中を切々と伝える感動の海戦記。
目次
第1章 駆逐艦乗りの秋
第2章 運命の火花
第3章 南十字星の下で
第4章 ジャワ海の砲声
第5章 ソロモンの波涛
第6章 火炎と砲弾の雨
第7章 霧の中の艦隊
著者等紹介
橋本衛[ハシモトマモル]
大正8年、福島県に生まれる。昭和11年6月、志願兵として、横須賀海兵団に入る。軍艦「山城」乗り組みをへて13年11月、海軍砲術学校に入校。同校卒業とともに、14年4月、駆逐艦「雷」に乗り組み、ジャワ海、ソロモン海、アリューシャン海域を転戦。18年4月、土浦航空隊勤務となり、予科練教育に従事。19年7月、硫黄島警備隊勤務。同11月、館山砲術学校勤務。20年2月、鈴鹿航空隊勤務となり、同地で終戦をむかえる。元海軍兵曹長。戦後、海上自衛隊に転じて、54年まで勤務する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スー
25
82漂流していた英軍兵を救助した事で知られる特型駆逐艦「雷」の砲術員の戦記。温厚な工藤艦長の下220名程の乗員達は正に一家と言え厳しい訓練にも戦闘にも耐え士気は衰えず若い隊員達の青春の場だった。煙草を吸いながら新しく仕入れたニュースや女性の話に夢中になり軽口や皮肉の応酬は今の若者達と何も変わらない。仲間と色街を歩いていて遭遇した威張り散らした巡邏を叩きのめした話や艦内でギンバイした話は楽しかったけどその仲間達があっという間に無惨な遺体になってしまう戦争の悲惨さを想い知らされました。2020/06/14
白義
16
狭くむさ苦しい駆逐艦の中で苦楽を共にする駆逐艦野郎どもの台所事情、下の事情のようなぶっちゃけたところまで明るさを感じさせる文章で一気に読ませる。雷のエピソードで特筆される人命救助も触れられるがあくまで一エピソードで、地獄のソロモン海戦、輸送作戦まで、ベテラン駆逐艦としての雷の活躍がたくさん楽しめ、むせ返るような生活臭が肌感覚で伝わる。豚を陸地で買ったらその豚が逃げ出したり、気にくわない巡邏の玉金を蹴り飛ばして遊女のところに逃げ込んだり、ワイルドなエピソードに新鮮味がある2014/05/22
浅木原
4
「雷」の砲術員だった人の、開戦前からアッツ島沖海戦までの手記。同じ雷の本だと『敵兵を救助せよ!』よりずっと読みやすいし変な思想語りも無いので好感。居住性の低い駆逐艦内のむさ苦しい生活の苦労話や食事がらみの話が面白い。第三次ソロモン海戦で負った被害の凄惨な状況には息を飲む。「名取」の艦橋の様子をおそらく著者の想像で書いてたりするあたりとかは首を傾げなくもないけど、「雷」について読むなら『敵兵を救助せよ!』よりはこっちかな。それにしても工藤艦長の次の艦長はどれだけ無能だったのか……。2014/03/23
竜王五代の人
3
海軍に入って数年、要領も心得た下士官の目で見た、開戦より43年前半までの雰囲気がよく出ていると思う。南方作戦あたり調子の良さが、ソロモンで暗雲を感じ、北方に転じてロートル兵が増えて溌溂さを失っていく。それと、小所帯だけあってトップの艦長の違いが大きい。明るくおおらかで兵の力を引き出す工藤艦長と、後任で独善で部下を委縮させ、おかげで衝突や座礁事故を引き起こした前田艦長。あと開戦時の航海長谷川中尉はのちの海将・谷川清澄。2022/05/11
Mikarin
3
主力艦ではなく、脇役である駆逐艦の現場レベルからの視点や指摘は大変貴重。実際に乗り込んでいた兵下士官達は詳細も分からずこんな感じで戦っていたのが良く分かる。2016/04/16
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