内容説明
眼前にせまり来るB29の巨大な機体に、必殺の三十七ミリ砲の引鉄をひく―。対大型機用に開発された二式複座戦闘機「屠龍」を駆って、“超空の要塞”に挑んだ陸軍航空のエースが綴る感動の空戦記。日本重工業の中枢・北九州に襲いかかるB29と本土防空隊との熾烈な戦いの日々を克明にとらえた迫真のドキュメント。
目次
第1章 初邀撃
第2章 不惜身命
第3章 開眼
第4章 激突
第5章 嵐の前
第6章 怒涛の敵
第7章 突進
第8章 屈辱
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スー
22
2337ミリ対戦車砲を備えた屠龍に乗りB-29を26機撃墜したエースです。空中戦が中心で楽しみにしていた横須賀海軍航空隊に訪れたエピソードは書かれていなかったです。武装は海軍より陸軍の方が優れていたまぁ陸軍の方が火砲の種類が多いから当然なのか?しかし海軍の夜戦はレーダーを装備しているのに対し陸軍は無く基地からの情報と探照灯が頼りで旧態然とした印象。それに陸軍は体当たりに走る傾向が多い感じがする。戦果はリスボンから放送されるラジオで確認していて自己申告した撃墜撃破の数と近いのに驚きました。勝つ軍は被害を正確2024/07/07
Mikarin
5
同時期の米英軍のドイツ空襲と比べると、日本軍の防空能力の低さや米軍の損害の低さを良く指摘されるが、少なくても北九州防空に関しては、かなりの撃墜率を誇っていたことがよくわかる。他の戦記モノでは不評な、別機種での無線の通じ悪さもなく、地上の対空部隊との連携も機能していたとの記述は大変注目。2015/07/03
零水亭
4
樫出大尉には26機撃墜説の他に7機撃墜説もありますが、後者だとしても充分に凄いです。他に漫画ですが、滝沢聖峰先生の作品『帝都邀撃隊』もオススメです。2020/05/25
晴天
4
B29を迎撃した複座戦闘機搭乗員の回想記。数十分かけて高空へ昇り、薄い大気と酷寒の人にも機体にも過酷な状況下、地上からの誘導や夜間は探照灯を頼りに敵機に接近し、実質1発しか撃つ暇のない37mm機関砲を至近距離から浴びせる屠龍は、B29に辛うじて対峙できる機体であった。燃料消費の多い双発ゆえに翼タンクは大きく、そこを撃たれると直ぐ発火したことから米兵に「ライター」と揶揄されるも、火を噴きつつも次々体当たりに持ち込む様は死闘という他ない。しかし何度撃墜しても次々B29の大編隊が現れる国力の差は如何ともできず。2017/05/29
うすいさち
3
「超空の要塞」と呼ばれる大型爆撃機B29の本土空襲を防衛する屠龍のパイロットの戦記。80機の大編隊や夜戦・高々度戦といった様々な状況下での戦闘、敵味方からB29邀撃の専門部隊と呼ばれるほどのエースパイロット達の活躍がほぼ本文を占める。しかし回想の所々で書かれるパイロットたちの国土防衛への使命感と失われた仲間の命の意味への問いが、作者の戦争そのものへの疑問が、敗戦国の戦後というのを考えさせられる。戦死した人達の想いを美化しすぎてもいけないけど無頓着なのも無責任で、右左でない想像力で読みたい。2014/02/11