内容説明
敗色歴然たる昭和二十年、「戦果なき出撃は希望せず」と真情を吐露し、あえて特攻志願を拒否した飛行四千時間をこえるベテラン機長―予科練一期生としての矜持をいだき、苛烈な航空決戦を戦いぬいた九六陸攻・一式陸攻機長が、紅顔無垢なる若きパイロットたちを偲んで、初めて綴った感動のノンフィクション。
目次
第1章 不死鳥のごとく
第2章 血の帰還
第3章 花の落下傘
第4章 危機一髪
第5章 嵐の前のひととき
第6章 ソロモンの空
第7章 男子の本懐
終章 特攻拒否
著者等紹介
東秋夫[ヒガシアキオ]
大正9年、都城市に生まれる。昭和12年9月、海軍甲種飛行予科練習生第1期生として横須賀航空隊に入隊。14年7月、九七艦攻専修員となり館山航空隊に入隊。11月、九六陸攻講習員として木更津航空隊に入隊。15年4月、13空付で中支漢口に赴任し第一線に出撃。5月、梁山攻撃で負傷し内地療養。16年3月、木更津航空隊。8月、1001空員として館山航空隊に転勤。17年6月、鹿屋航空廠でテストパイロット勤務。18年4月、702空に転勤、ラバウルに進出(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ポルトン
31
海軍予科練習生の第一期生である著者が綴った凄まじい戦争体験のノンフィクション!2度目の出撃で自爆決行からの奇跡の浮上。九六陸攻、一式陸攻の機長として最前線を転戦しつつ度重なる不時着を成功させ多くの戦友の死を見続けた!雷撃に三度以上出撃したペアは居ない…撃墜率八割の死線を潜り抜け戦時下にあって飛行4000時間を達成した著者に特攻志願の呼びかけが… 資源のまったくない日本に於いて唯一の資源は優秀な人材であったはずなのだが軍部は全て人間を使い捨てにした! この事実だけは絶対に忘れてはならないと痛感させられた。2017/09/30
スー
17
44九六式陸攻と一式陸攻のパイロットの戦争体験記落下傘兵を乗せ出撃した時は友軍機に攻撃され輸送隊に損失を出し兵士達を降下させれば敵のトウチカの真ん前で重装備は離れた場所に落とし部隊は有効な攻撃が出来ず大損害、ラバウルでは圧倒的物量の差を見せつけられスコールを掻い潜り敵艦隊を襲撃すれば何も見えないのに対空砲火に晒されやっと雲の下に出れば煙幕で何も見えず必死の思いで魚雷を投下しても戦果確認などする暇も無く結果大本営発表となる。あまりにも杜撰で無謀な作戦と能力を超えた任務で多くの人材を失う。どこぞの国も同じだな2022/05/27
Quijimna
8
海軍攻撃機のパイロットとして、奇跡的に終戦まで生きのびた下士官の自伝。台湾、ソロモン、ラバウル、中国。戦略的な巧みさと冷徹な作戦でジリジリと包囲する連合軍に対して、人を粗末にし、糧食を考慮せず、そして無能な指揮官が処罰されることのない日本軍の実態を、ヒリヒリと肌を焼くように追体験する1冊。末期、特攻隊を志願しない筆者を、自らが死地に赴くことのない将校が暴行するシーンは、あの戦争の強烈な実相を示す。★★★★☆2019/02/05
Toska
5
爆撃、空挺部隊降下、輸送、哨戒、雷撃にテストパイロットまで、恐ろしく多彩な任務をこなした陸攻搭乗員の手記。戦闘の中で感じた恐怖やパニックなどの感情を正直に告白している点に特色がある。二度の雷撃という「晴れ舞台」で恐怖を克服できなかった事実さえ隠してはいない。そして、何と言っても戦争末期の特攻志願拒否。上官の殴打のみならず、周囲の白眼視を耐え抜いた著者は、真の意味で勇気ある人だったのだと思う。2022/07/13
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