内容説明
汗と埃にまみれて、戦野を駆けまわること幾年月、その距離なんと一年で三千六百キロ。歩兵とは疲れるものなり…。下っぱ兵の身であれば、重い装備を山積みにして、泣く泣く進んだ強行軍。つのる思いは故郷のことばかり。足と根気だけがたよりの戦場ぐらしの日々を軽妙洒脱に描いた話題のイラスト・エッセイ。
目次
醤油の効もなく
愛犬コロの入隊
教育棒と重機関銃
中隊長
ゲッケイ殿
兵隊は馬以下
面会あれこれ
初年兵いじめ
シベリアケーキ
さようなら、赤城山〔ほか〕
著者等紹介
斎藤邦雄[サイトウクニオ]
大正9年11月、群馬県藤岡市に生まれる。昭和16年3月、東宝在職中に召集により、高崎東部38部隊第1機関銃中隊に入隊。一期教育終了後の7月、北支「陣」部隊(河北省)へ転属。20年6月、部隊は満州へ移動し、関東軍の指揮下に入る。同年10月、シベリヤへ抑留となって、イルクーツク地区の四ヵ所のラーゲリを転々とする。23年7月、復員。東宝を退社してフリーとなり、「東京児童漫画会」に所属し、各児童雑誌に執筆する。40年、フジテレビエンタプライズに入社、TVアニメの制作を担当する。48年に退社(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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CTC
11
09年光人社NF文庫新装版刊、単行本は85年同社。著者は18年生まれ、ご存命ならば百寿を越えるわけだが、ちと確認できなかった。このシリーズは漫画調の挿絵がポイントになっているのだが、氏は高崎生まれで東宝在職中に招集。東宝でも特技を活かした仕事をしていたようだが、シベリア抑留を経て復員したのちは漫画家として児童雑誌などで活躍し、後にはフジテレビでアニメーションを手掛けている。通勤電車ではなんとも読み応えが足らないだろうが、妙味のある絵と飾らない文章が休みの読書にはちょうど良い。発見も十分にあった。2020/05/05
ushimanm5
0
一応兵卒から見た帝国陸軍(弱)での悲哀溢れる経験を面白おかしく(ほとんど笑えないが)書いた一冊である。ひとつひとつの逸話の面白みはもちろんだが、娑婆から赤紙一枚で引き摺り込まれた軍隊の毒に侵され染まっていく様は悲惨である。批判的精神を基本とはしているものの、軍隊文化に情愛を感じていることも読んで取れ、実に著者の人間味溢れる一冊である。2021/01/25