内容説明
防御力ゼロに等しい一式陸攻を駆って、日米攻防たけなわのソロモンの大空に出撃をくり返すこと二百余回―。搭乗員の墓場といわれたラバウルで中隊長、小隊長、つぎつぎと戦死して、愛するペアもまた暗夜の海上に未帰還となり声なき死闘の中で万余の銃火をくぐりぬけ生還を果たした空の男の感動の空戦記。
目次
第1章 将旗はためく下に
第2章 搭乗員の墓場へ
第3章 奇蹟の生還
第4章 しのびよる危機
第5章 大空に死闘つづく
第6章 夜の帳を炎にそめて
第7章 花吹山のかなたに
第8章 さまよえる陸攻隊
著者等紹介
蔵増実佳[クラマスジツヨシ]
大正3年、鳥取県倉吉市の農家に生まれる。山陰公民学校卒。昭和8年5月、呉海兵団に入る。9年2月、24期操縦術練習生として、霞ヶ浦航空隊に入隊し、憧れの大空へ第一歩をふむ。大村空、空母「龍驤」乗組、横須賀空をへて、18年3月、第3艦隊司令部付。18年4月、751空に属し、ソロモン、ニューギニアの死闘に参加。元海軍中尉。戦後、組合立厚生病院、県立厚生病院、保健所等に勤務。元鳥取県厚生部参事。救護施設大平園副園長などをへて、倉吉病院ケースワーカーをつとめる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スー
20
64敵味方双方からライターと揶揄された一式陸攻に乗った筆者はラバウルの751空に所属し200回を超える任務をこなし奇跡的に生き延びたパイロット。機体の性能と量・隊員の数・施設の質全てに劣る状態でも米軍に対抗し続ける隊員達の苦闘と努力がよく伝わってきました。この本で初めて隊員不足で機体に乗る乗員を減らして飛べる機体を増やしていた事を知って驚きましたかなり厳しかったようです。それから自軍の高射砲があまりにも下手くそなのを嘆いているのは笑えました。2022/07/31
零水亭
4
2007年頃読みました。空襲で大怪我された野田兵曹(本文に少しだけ登場。生還されましたが、2002-03年頃?永眠されました)と少しだけ接点があったため、尚更思い入れの深い本です。 なお、「ワンショットライター」は米軍側からの揶揄した呼称でなく、日本海軍の搭乗員が自虐的に呼んでいたと言う説が有力のようです。意外と撃たれ強かったという説もありますが、航続距離重視・防御力軽視の「インテグラルタンク」は、右寄りな自分からしても、かなり残念な機構です。
Mikarin
4
ラバウル航空隊の陸攻隊の損耗率は驚くばかり。著者は奇跡と言ってもいいほどの幸運の持ち主と思われる。ソロモン攻防戦のさなか、搭乗員不足から一式陸攻の操縦を2人ではなく、1人でせざるを得なかったという記述には大変驚かされる。やはり、物量、そしてマンパワーにおいて差があり過ぎたと言うほかない。今の自分の仕事、業界においてもあてはまる点多々あり、耳が痛い所がある。2015/12/30
もちもち
3
一式陸攻の戦記は初めて読んだ。 戦闘機に乗っていた人の戦記は数も多く、つまりはスピードの遅い雷撃機や艦爆、陸上攻撃機に比べて生存者も多かったということだろう。(それでも同期の戦闘機乗りの内2、3人しか終戦時に生き残っていなかったというエピソードは多いが) 10年以上海軍に所属していたということで、ベテランとして信頼も厚いのかあの小沢長官を乗せて操縦したというエピソードにも驚いたり2021/05/30
tora
3
人員も機材も機の性能も足りない、なにもかも足りない中で奮闘したラバウル陸攻隊の戦記。敵の一撃で火を噴く一式陸上攻撃機を操り何度も死線を潜り抜ける。自分が操縦するはずだった機が戻らずペアを全て失ったシーンはあまりに悲痛である。ソロモン方面の陸攻隊の損耗の多さがよくわかる。著者が生き残ったことはまさに奇蹟といえよう。2010/11/13