内容説明
本居宣長から橘樸まで日本を作る言説と日本が作る言説と子安思想史の方法的解読作業の新たな成果。
目次
1 日本の固有性と他者の痕跡―宣長における狂気と正気
2 「日本語」の理念とその創出―宣長『古事記伝』の贈り物
3 祭祀国家日本の理念とその成立―水戸学と危機の国家神学
4 国体論の文明論的解体―福沢『文明論之概略』と国体論批判
5 道徳主義的国家とその批判―福沢「智徳論」の解読
6 「日本民族」概念のアルケオロジー―「民族」・「日本民族」概念の成立
7 「民族国家」の倫理学的形成(その一)―和辻倫理学をめぐって・倫理(エシックス)から倫理へ
8 「民族国家」の倫理学的形成(その二)―和辻倫理学をめぐって・昭和日本の倫理学
9 哲学というナショナリズム―「種の論理」・国家のオントロジー
10 東洋民族協和と「国体」の変革―橘樸「国体論序説」
著者等紹介
子安宣邦[コヤスノブクニ]
1933年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科(倫理学専攻)修了。大阪大学名誉教授。思想史・文化理論専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かんがく
14
ナショナリズムとは「ネイション」の解釈から、国家主義、国民主義、民族主義など様々な訳し方をする。本書では、本居宣長、福沢諭吉、和辻哲郎、田辺元、橘撲らが国家、国民、民族、日本をどのように捉えたかが書かれる。個人的には福沢のラディカルな国体論が面白かった。2019/07/18
lalaright
2
戦後の日本ナショナリズムの批判が今私たちに課せられていると著者は言う。が、戦後どころか戦前にもさかのぼって、ありとあらゆる日本のナショナリズムを批判的に解読してくれている。日本は中国や韓国にも劣る、歪んだナショナリズムを持つ国、という結論が先にありきの内容なので、読んでいてつらい。ナショナリズムの不可欠な要素が国や民族を愛することであるならば、著者は日本を愛したことなど一切ないのではないかとさえ思われてくる。反日の方にお勧めしたい本。2011/01/30
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
0
ここでの『解読』は近代に対する真摯な批判的解釈のことだ。結論は、後書の「昭和初期とは、明治の国家形成期のナショナリズムとは異なったもう一つの、あるいは『日本ナショナリズム』と呼ぶべきナショナリズムの成立期である」にある。宣長-(徂徠)-正志斎-福沢-和辻-田辺元-橘樸という時系列で、和辻からが後半というか本番か。和辻への強烈な批判に驚いたけれど、個人的に、昭和14-5年の京大での講義。「国家のために死ぬこと」の意義を必死に問いかける学生とそれに応えようとする田辺の国家哲学(『歴史的事実』)に興味を持った。2012/01/24