内容説明
“市民”のあり方を思考する「シティズンシップ」をキー概念として、ソクラテスから現代までの教育思想史を読み直し、混迷する教育改革論議に哲学のメスを入れる。教育学の最前線で行なわれている議論をわかりやすく紹介、国民教育から新しい公教育の思想へ、“市民”への教育を構想する画期的な教育学入門。
目次
いま、なぜシティズンシップか
教師に哲学は必要か
プラトンの絶望と「総合的な学習の時間」
ソクラテス対センス
啓蒙的理性と教師像
シニシズムという問題
啓蒙の別の顔
ルソーと近代教育
国民教育と市民
近代的個人の形成と再編
マルクス主義の逆説
児童の世紀とユートピア主義
過去と未来の間に立つ
シティズンシップの再政治化へむけて
著者等紹介
小玉重夫[コダマシゲオ]
1960年生まれ。東京大学法学部卒。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。慶応義塾大学教職課程センター助教授を経て、現在お茶の水女子大学文教育学部助教授。博士(教育学)
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感想・レビュー
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ステビア
26
議論が錯綜している。タイトルが中身を適切に表していない。2022/03/28
takao
4
ふむ2023/11/13
toshiro1912
2
丁度1年ぶりくらいに再読。昨年読んだ時とは比べ物にならない程知的興奮を得られた。哲学、教育、政治という3つのファクターを見事につなぎ合わせて描き出している良書。またしばらくしたら再読したい。2015/10/15
ソーシャ
1
教育思想の流れを現代の問題意識からざっと眺めていく本。薄い本ですが内容は結構濃く、これからのシティズンシップ理論についての課題とアレントの「過去と未来の間」としての教育を結論としてこれからの教育についての提言をしています。教育思想についてある程度の予備知識がないときついかもしれませんが、教育思想をどう考えるかについての視点を提供してくれる本です。2014/06/08
まつゆう
1
ハンナ・アレントの理論から、従来の教育は保守もリベラルも、子どもの教育で世界が今より良くなるというユートピアを描く裏で、個々人が今、どのように政治と関わるかという思想が欠けていたことを指摘。その哲学的根源は哲人支配(これは哲学を公共の場から絶縁させたシニカルな態度でもある)を説いたプラトンや労働者支配のマルクスにあり、これからはプラトンではなく、政治と哲学をあえて緊張関係に置き、より良い政治を目指そうとした「ソクラテス的センス」を範にして、市民性教育を評価しよう、というのが骨子(な気がする)。2012/11/18