出版社内容情報
本書はフライブルク大学の歴史学者ウルリヒ・ヘルベルトの25年にわたるナチス研究の論文、講演11本をまとめたものである。
さまざまな視点からナチスの犯罪を糾明するアプローチにより、ナチズムの本質と犯罪を丁寧に解明している。ドイツ国民を引っ張ったのは犯罪者の小さな集団だったのか、それとも国民のはば広い層に担われたファシズム運動だったのか。「だれがナチス党員だったのか」という問いに対する答えは数多く存在する。ウルリヒ・ヘルベルトは、この問いを自分の研究の出発点にすることによって、ナチ独裁体制の性格に深く分け入り、その支配の中心的な視点を浮き彫りにしている。
的確に根拠を示してゆく彼の論文は、ナチズムの歴史に対する彼の考察をまとめているばかりでなく、この数十年間にナチ研究がたどった道を反映し、すぐれた成果をあげている。本書を読むことで、ナチスの戦前、戦中、戦後の犯罪と問題点の全体像を浮き彫りにすることができる。
ナチス研究者に向けた精緻な報告ではあるが、ナチ独裁体制に関する今日的立場が複層的にまとめられているほか、ナチの思惑通りに働かせられた市民やアカデミックな専門家の心情も客観的に指摘されている。一般読者もナチズムについて視野を広げ学ぶことができる一冊。
【目次】
本書について
ドイツの過去と現在としてのナチズム――日本語版への序言
第1章 ナチス党員とはだれだったのか
第2章 ナチス党員は第一次世界大戦からなにを学んだか
第3章 ユダヤ人憎悪はどこから来たのか
第4章 収容所の世紀
第5章 第三帝国のドイツの教授
第6章 ナチスの支配とスターリンの支配
第7章 ドイツのヨーロッパと大ゲルマン帝国
第8章 バルバロッサ
第9章 ヨーロッパ・ユダヤ人の殺害への道
第10章 「民族共同体」の残響
第11章 連邦共和国のナチ・エリート
訳者あとがき