出版社内容情報
批評は創造的な社会実践だ!
絵画や音楽や映画をどう“ジャンル分け”するか? 分析美学の観点から批評という実践を再考し、単なる分類ではないカテゴライズのダイナミクスを解明する
芸術作品をどう理解し、評価するか、その鍵は「カテゴリー」にある。本書は、分析美学の観点から芸術批評という実践を再検討し、作品のカテゴライズが判断に与える影響について考察する。批評は単なる好き嫌いではなく、鑑賞のルールをめぐる社会的相互作用であり、制度的文脈を構成する創造的営みであることを明らかにする。「批評の哲学」を更新する意欲作。
【目次】
はじめに
1 なにについて論じるつもりなのか
2 どう論じるつもりなのか
3 なにを主張するつもりなのか
4 なにを論じないのか
第一章 批評とは鑑賞のガイドである
1 批評とはなにか
2 鑑賞ガイドではない批評があるとする反論に応答する
3 批評ではない鑑賞ガイドがあるとする反論に応答する
4 酷評も鑑賞ガイドなのか 29
COLUMN 選択ガイドとしての批評観
第二章 鑑賞とは単なる好き嫌いではない
1 芸術鑑賞は好き嫌いの問題なのか
2 素朴な主観主義に反し、鑑賞は単なる好き嫌いの問題ではない
3 ヒューム的説明――鑑賞は好き嫌いの問題だが、鑑賞者については有能さが問えるとする見解
4 ヒューム的説明の問題点――理想的鑑賞者は一方で十分な権威を持たず、他方で過度な権威を持つ
第三章 鑑賞とは卓越性の測定である
1 鑑賞の客観的側面から出発する
2 アリストテレス的説明――鑑賞は好き嫌いの問題ではなく、特定の目的に照らした測定だとする見解
3 主観制約を満たさないことは美的なものと芸術的なものの区別によって正当化される
4 アリストテレス的説明に残された課題――観点選択の問題
COLUMN ムーア的説明?
第四章 鑑賞はカテゴライズに依存する
1 カテゴライズが鑑賞を左右するとはどういうことか
2 反文脈主義から文脈主義への移行
3 美的判断はカテゴライズによって左右される
4 美的判断論から芸術批評論へと拡張する
第五章 カテゴライズは単なる分類ではない
1 ふさわしいカテゴリーと属するカテゴリー
2 芸術作品は属するカテゴリーにおいて適切に鑑賞されるとは限らない
3 芸術作品は属さないカテゴリーにおいて適切に鑑賞されるかもしれない――奇妙さからの論証
4 純粋な認知主義との決別
第六章 ジャンルとは鑑賞のルールである
1 ジャンルとはなにか
2 ジャンルとは作品を分類するための諸概念であるとする見解
3 ジャンルとは鑑賞を統制するルールであるとする見解
4 作品はジャンルへと分類されるのではなく、ジャンルのもとにフレーミングされる
COLUMN 1 伝統としてのジャンル?
COLUMN 2 ジャンルとしてのカラー写真
第七章 ふさわしいジャンルとは制度である
1 ふさわしいジャンルはなにによって決まるのか
2 ふさわしいジャンルは作者の意図によって決定されるという見解
3 ふさわしいジャンルは制度的に決定されるという見解
4 いいとこ取りとしての制度主義
COLUMN ジャンルとしてのヴェイパーウェイヴ
第八章 批評の意義は判断の柔軟性を養うこ



