出版社内容情報
焼け跡に芽生えた“したたかさ”
徳富蘇峰は、なぜ占領を
皮肉なまなざしで見つめながらも
受け入れたのか。
山田風太郎は、敗戦の街で何を見たのか。
屈従でも、抵抗でもない。
その“あいだ”に生きた日本人の静かな力を描く。
焼け跡に再生を夢見た人びと。
占領軍の支配のもとで、日本人はいかに生き延び、新たな社会をつくったのか。
占領に否定的であった徳富蘇峰は、言論人としての立場を追われながら、占領政策をどう受け止めたのか。
山田風太郎は、焼け跡と新憲法のはざまで何を記し、何を見抜いたのか。
GHQによる検閲、天皇観の揺れ、戦犯への視線――。
二人のまなざしを軸に、日記・投書・漫画・社会調査など多様な史料を丹念に読み解き、
「従順でも抵抗でもない」敗者たちのしたたかな生のかたちを描く。
静かなる占領の時代を生きた日本人のリアルを捉えた新しい政治・社会史。
【目次】
はじめに
Ⅰ 衝撃の時──「敗戦」を受け止める
第1章 敗戦から占領へ
1 前史
2 一九四五年一〇月二日――第一生命ビルからのスタート
Ⅱ 改革の時──「民主主義」に遭遇する
第2章 国体を守る
1 最高法規を(天皇と)合作する
2 天皇を浄化する
第3章 民主主義という希望――『サザエさん』の時代
1 民主主義の基盤を整える
2 人間として個人として尊重される
第4章 「無自覚の罪」を断罪される――命令に従うことは罪なのか
1 「無自覚の罪」
2 裁かれる兵士たち
Ⅲ 受容の時──現実に向き合う
第5章 被害者共同体を生きる
1 性の防波堤とされた娘たち
2 ラジオがつないだ被害者共同体
第6章 「勝者の裁き」を受け容れる
1 矛盾を孕んだ東京裁判
2 人びとは判決にいかに向き合ったのか
第7章 民主主義を転化する――『ブロンディ』の時代
1 「民主主義」のショーウインドー
2 アメリカン・デモクラシーへの憧憬
Ⅳ 回収の時──占領を消化する
第8章 巻き返し
1 「逆コース」の展開
2 日本人と占領
終 章 占領の遺産
1 天皇
2 憲法
3 戦犯裁判
4 惨めさに決着をつける
註
主要参考文献
あとがき



