出版社内容情報
裁く権限はどこにあるのか――
日仏の奇妙な「共存」の果てに、戦後の裁きは行われた。
日仏越の最新の資料を用いて、忘却された戦犯裁判の実態と、そこに表れる植民地主義の根深さに迫る。
東京裁判とBC級裁判では、「戦勝国」かつ「被害者」である連合国が、日本人による戦争犯罪の審議を行った。そのうちの一国がフランスであったが、第二次世界大戦下にドイツ占領下に置かれたフランスは、インドシナで駐留する日本と協力関係を築いていた。このような状況にあったフランスが、日本人戦犯裁判にどう関与していたのかほとんど知られていない。
本書では日仏共存した仏領インドシナ時代から、サイゴン裁判、東京裁判に至るまでの過程を克明に再現し、「未完の脱植民地化」を明らかにする。
【目次】
はじめに――日本人戦犯裁判を読み直す
第一章 第二次世界大戦期のインドシナ――日本とフランスの「共存」
はじめに
1 日本の仏印進駐とフランスの対応
仏印軍の脆弱さと日本軍の北部仏印進駐/ランソン武力進駐事件/
南部仏印進駐と太平洋戦争の開始/日本人とフランス人の競合/日仏の奇妙な共存
2 インドシナのヴィシー化
国民革命の展開/フランス人の二枚舌/青年運動の展開/
ベトナム民族意識高揚への加担/ドゴール派の弾圧
3 日仏の協力?
共同支配のカムフラージュ/「文化交流」という枠組み/日本語教育をめぐる攻防/
プロパガンダにおける戦略/日本によるラジオ放送や出版物
おわりに
第二章 戦後インドシナをめぐる混乱と「清算」
はじめに
1 残留日本人という脅威
ベトミンによるリクルート/フランスの対応と日本の協力/ベトミンの警戒
2 ヴィシー派植民地当局の責任追及
インドシナにおける「粛清」/フランスでの調査委員会/ヴィシー主義普及に対する糾弾
3 日本との共存に対する批判
日本のプロパガンダの影響/問われた「親日度」/日本人に対する「抵抗」の強調/
日本人との不都合な協力関係
4 ドゴール派弾圧とレジスタンス活動の不在
ドゴール派密告の追及/反駁する者たち/レジスタンスの「捏造」
おわりに
第三章 サイゴン裁判で何が裁かれたのか
はじめに
1 裁判開廷への道
連合国戦争犯罪委員会の設置/インドシナにおける戦犯調査の準備/
イギリス軍と中国軍の駐留/フランスには戦犯処理の権限があるのか/
フランスによる戦犯調査の開始/フランスと中国の確執/フランスの執念
2 サイゴン裁判の概要
裁判開廷/何が裁かれたのか/裁かれなかったもの
3 裁判の判決
クラチエ事件裁判(第三号事件)/プノンペン憲兵隊裁判(第八号事件)/
ニャチャン憲兵隊裁判(第九号事件)/サイゴン憲兵隊裁判(第一一号事件)/
パクセ収容所裁判(第一三号事件)/仏印捕虜収容所裁判(第一四号事件)/
ハノイ憲兵隊裁判(第二九号事件)/ランソン虐殺事件裁判(第三九号事件)/
高官の免訴
4 裁判のその後――服役と恩赦
プロコンドール島での生活/恩赦
おわりに
第四章 東京裁判というアリーナ――連合国と法律家たちの思惑
はじめに
1 裁判開廷への道
国際法廷の設置/困難な人選/アメリカによる任命
2 訴因をめぐる攻防
フランス代表団の到着/オネトの格闘/法廷外の奮闘
3 フランスによる立証段階
証拠の収集/
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