出版社内容情報
人はなぜ、裏切られても信じるのか――。
社会秩序の根源にあって、私たちの生活を支える「信頼」について
ホッブズ、ヒューム、カントらの哲学を手がかりに、
日常的な事例をもとに論じつくす。
内容説明
人はなぜ、裏切られても信じるのか―。社会秩序の根源にあって、私たちの生活を支える「信頼」について、ホッブズ、ヒューム、カントらの哲学を手がかりに、日常的な事例をもとに論じつくす。
目次
序論 信頼の謎を掘り起こす
第1章 裏切りの誘惑に抗う―認知的信頼
第2章 善意のしるしと、裏切りの痛み―感情的信頼
第3章 制度とともに生きる―制度的信頼
第4章 裏切らない理由を求めて―信頼の多層構造
第5章 不信の力を見きわめる―自由と抵抗の拠点として
結論 信頼と裏切りの哲学
著者等紹介
永守伸年[ナガモリノブトシ]
1984年生まれ。京都市立芸術大学美術学部専任講師を経て、現在、立命館大学文学部准教授。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は近世ヨーロッパの哲学のほか、信頼研究、現代倫理学、障害学など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
びす男
21
面白い!図書館の「お勧め」の棚から借りたが、すばらしかった。「司書さんはすごい」というのが一番の感想である■人間関係、ひいては社会の基礎となっている「信頼」とは一体何だろう――。本書では哲学者らの議論を引きながら信頼、合理性、裏切り、不信といった概念を腑分けしていく■普段何気なく使っている概念がクリアになり、人間と社会のありようが見えてくる。「合理的な裏切り」はあり得る。しかしそれをもって、ただちに「社会の底が抜けている」と言うのは早計だ。理屈と現実のバランスが取れた結論で、最後まで小気味よかった。2025/03/16
buuupuuu
19
信頼は3つの観点から分析されてきたという。一つ目は信頼を、利害が一致した相手への期待と考える。二つ目は、感情的な応答に基づく楽観的態度と捉える。感情はシグナルによって伝えられるだけでなく、同調を促す働きも持つ。三つ目は、制度という観点から信頼を考える。相手が制度に沿って振る舞うと期待できるのは、賞罰ゆえにではなく、制度に沿うことがその人の行為を理解可能なものにするからである。たとえば医者ならば医者のように振る舞うはずだという訳だ。健全な社会のためには信頼だけでなく、不信もまた必要なことも論じられている。2024/05/07
Humbaba
3
相手を信頼するというときれいに聞こえるが、それにはリスクが付きまとう。自分の行動であれば自分自身が判断して決定できるが、相手の行動については自分ではコントロールできない。約束であればそれが守られなかった場合についても話し合うこともできるが、信頼の場合はそれも難しい。勿論そのような状況だからこそ信頼によってつながって成功した場合の価値は高いともいえるが、それをすべて信じるというのは容易なことではない。2024/06/01
ハナさん*
3
2024年2月15日初版第1刷。県図。直接的には、心の問題ゆえに人を信頼できない友人のことを考えて。とともに。考えてみれば、広義の信頼がなければ、何かを買って食べることもできない。社会というものは信頼で成り立っているのだよな、という気づきもあって。心理学的ではなく、哲学的なアプローチから、信頼と不信、また裏切りというものを読み解いている。なぜ人は、「にもかかわらず」「それでも」「あえて」信頼するのか。なぜ、ここぞという時にも裏切らないのか。それらを認知的信頼・感情的信頼・制度的信頼の各層から考察している。2024/05/05
zunzun
2
・認知的信頼 ・感情的信頼 ・制度的信頼 これらが多層的に関わり合うと考える。 どの信頼にも一概には言い切れない部分があり、それを他の部分で補う。この三点を引き継いで、不信、裏切りなどがどうして起こるかを語る。 読むべき部分を指摘できない本だった。 オンラインゲームではなぜお互いが協力しあうのか?ということを考えるときに本書を利用してみると自分には有益な書物なのではないかとおもえた。 それが理由で手に取ったわけだしなあ。あくまでも内的コミットメントに拘ってる感じがあったけど。もう一回よんでみるか・・・2024/02/16