出版社内容情報
▼シリーズ「世界を読み解く一冊の本」(全10巻)、第六弾。
▼諸作品に登場する「虎」を追い、ボルヘスの謎に迫る。
幻想小説の巨匠ボルヘス(1899-1986)が1944年に発表した短編小説集『伝奇集』を、その出自や読書遍歴、視力の喪失といったパーソナルヒストリーとも照らし合わせ読み解く、必読のボルヘス論。
ルート・メタファーとしての「虎」を追い、ボルヘスの謎に迫る――。
内容説明
20世紀文学の傑作(中の傑作)、ボルヘス『伝奇集』。この巧智あふれる書物に向き合い、その多彩な謎を鮮やかにとりだして再‐物語化しながら、虎、無限、円環、迷宮、永遠、夢といったテーマをめぐる探究を読者に誘いかける。ボルヘス流の仮構やたくらみを創造的に模倣しつつ語られた、まったく新しい画期的なボルヘス論。
目次
1 “ボルヘス”という秘め事
2 『伝奇集』の来歴
3 “完全なる図書館”の戦き
4 バベルの塔を再建すること
5 夢見られた私
6 震える磁石の針の先に
7 永遠に分岐しつづける小径
著者等紹介
今福龍太[イマフクリュウタ]
文化人類学者・批評家。奄美自由大学主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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三柴ゆよし
28
今福龍太からボルヘスへの熱烈なラヴ・コール。オタクの書いた文章として、輓近、これほど暑苦しくておもしろいものはそうそうないだろう。ボルヘス『伝奇集』の解説本というよりは、その類稀な言語魔術に絡めとられたひとりの男(あるいは無数の他者)の手による『伝奇集』の異本(ヴァリアント)と呼ぶべき一冊。本書を読むことで、ただでさえ無限に近い読みの可能性を内包する『伝奇集』という書物はアップデートを遂げ、新たな無数の岐路が生じてしまった。言祝ぐべきか、あるいな絶望するべきか、読者としては悩ましいところではあるが……。2019/12/28
masabi
14
【概要】ボルヘス「伝奇集」を他の著作と合わせて解説する。【感想】「伝奇集」自体を読んだのが数年前だったので、本書の細部まで味わえたかは怪しい。それでも、読んだときの迷宮や円環に踏み入れたかのような錯覚を本書を読んで思い出すことができた。解説を読みやはりボルヘスは短編小説の名手だと思った。「伝奇集」や他の著作も読んでみたい。2020/05/15
Tenouji
12
ボルヘスを楽しむための本。バベルの図書館のような「構造」と円環や迷宮といった「無限」ネタがお好きなら、是非、どうぞw。2020/03/12
gu
7
解説書・入門書というにはマニアックで、著者の思い入れが強く出ている。ボルヘスへのオマージュといった方がいいかもしれない。現実から独立した幻想というボルヘスのイメージに対し、その中にも自伝的というか、彼の思い出、人格といった個人的な要素を読み取る。たしかにボルヘスの作品は(眠ることで、読書することで見る)夢であり、夢は、それがどんな非現実的なものであっても、それを見た者が生きた人生や読んだ書物を材料にしている。2020/06/24
monado
5
『伝奇集』を通じてボルヘスの真髄へ迫るというスタンダードながらも、うまく周縁情報を盛り込むことで新しい切り口にもなっている。バベルの塔、バベルの図書館の図像を追う流れも大変興味深かった。2020/05/25