内容説明
本書は、トロウの発展段階論とクラークの比較高等教育システム論を手掛かりとして戦後日本の教育行政を俯瞰し、これからの大学が備えるべきシステム、価値、および理念を見定めたうえで、「全入」問題、高大接続関係、秋入学、ファンドレイジングなど、具体的かつ喫緊の課題について指針を与える。すべての大学人にとって、必読の1冊である。
目次
1部 改革の流れを読む(大学教育にグローバル化を読む;学生生活と教育の変容を読む;大学の多様化政策を読む;トロウのユニバーサル化論を読む)
2部 改革を問い直す(質の保証装置を問う;入学者選抜を問う;認証評価制度を問う;大学院を問う;建学の精神を問う)
3部 改革に歴史を考える(「全入」時代を考える;接続関係を考える;教養教育を考える;秋入学を考える;大学教員を考える;ファンドレイジングを考える;教育研究組織を考える)
著者等紹介
天野郁夫[アマノイクオ]
1936年神奈川県生まれ。一橋大学経済学部・東京大学教育学部卒業、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。名古屋大学教育学部助教授、東京大学教育学部教授、同学部長、国立大学財務・経営センター教授、同研究部長を経て東京大学名誉教授。専攻は教育社会学、高等教育論。著書は『試験の社会史』(東京大学出版会、1983/平凡社ライブラリー、2007/サントリー学芸賞受賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Moloko
2
大学改革について戦後期だけでなく、明治期の大学の誕生期にも遡って問題の根源を歴史的に紹介、考察したもので、いかに現代まで引き摺っている日本の大学の構造がヨーロッパやアメリカの部分的模倣で形成されていき、一方で文部省・文科省が20世紀の末まで大学に規制をかけて高等教育をコントロールしようとしたか等々、そしてそれらが今の大学の問題とどう関わってくるのかを論述している。初年次教育や教養や専門職課程の問題やズレた解決策である入試改革等々を学生側から見てきたが、教育への大学の自己解決能力の低さの理由を理解できた2017/08/23
Tsutomu Yamamura
0
教育社会学、高等教育論が専門の著者による、小論文・講演記録・シンポジウムでの発言などを収録。大学の歴史や課題、改革の背景などが、繰り返し説明されて、読み進めていくうちに大きな流れがわかるような気になりました。欧米の大学と日本との違い。エリート⇒マス⇒ユニバーサルという歴史の流れ。日本の高等教育の歴史。大学に勤めるものとして勉強になりました。2015/09/01
エレ舞
0
述べられてる内容には首肯するが、ひとつ大きな視点がすっぽり抜け落ちている。文科省と教員の他に、大きなロールを持つ「大学職員」が一切でてこない。「大学職員」が抱える問題点と課題が、大学改革にとってかなりの大きな柱。教員がいくら論理だてて理論的に話しても、「大学職員」はそれでは動かない。2020/06/07