出版社内容情報
明治初年、「工部の理念」のものに、西洋技術による殖産興業を担う技術官僚たちがいた。明治留守政府下の政治状況と工部省の政策過程を追った近代日本史の知られざる一面を描く画期的論考。従来の経済史の立場からの分析ではなく、お雇い外国人や技術官僚に着目し、政治史の視点から、「殖産興業」を論じる。
内容説明
明治初年、「工部の理念」のもとに、西洋技術による殖産興業を担う技術官僚たちがいた。明治留守政府下の政治状況と工部省の政策過程を追った近代日本史の知られざる一面を考究した画期的論考。
目次
第1部 工部省の成立と技術官僚(工部院設置をめぐる政治過程と技術官僚;工部省設置過程と「工部の理念」;草創期工部省の組織整備と技術官僚)
第2部 明治初年における工部省の展開と政策実現(明治五年の行政史的展開;明治五年の政策展開と政治手法;明治六年の政局と工部省の政策過程)
第3部 明治初年における工部省の政策実現の背景(明治初期鉄道建設をめぐる住民と技術官僚;工部省の「西洋性」と西洋意識)
著者等紹介
柏原宏紀[カシハラヒロキ]
1978年生まれ。2003年、慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了。2008年、慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻後期博士課程修了。博士(法学)。現在、慶應義塾大学、洗足学園音楽大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
6
本格的な技術官僚の源流に位置づけられ、当時の社会全体に西洋的なもの・科学的なものが普及されていない段階での専門性を持つ「技術官僚」。彼らが共有したのが「工部の理念」であり、それは、各事業を一元的に管轄する組織、国内技術者の育成、他省や政治の介入を回避すること、これらを通じて殖産興業を着実に進めることであった。一度はこうした理念を実現したかに見えた工部省ではあったが、政治制度の変革のために自ら政治の表舞台に立たざるを得なくなる場面もあった。ただ、なぜ工部省が短命に終わったかについて触れておらず少し残念。2022/12/16
鵜殿篤
0
今となっては工部省というのはなかなか謎な組織で、特に工部省美術学校がどんなんだったかに興味があって読んだのだけど。まあ工部省美術学校についてはまったくわからなかったけれど、工部省の論理についてはなかなか興味深く読んだ。佐野常民についてもそこそこ分かったし。
rbyawa
0
e190、明治3年の時点での民部と大蔵省の争い、という段階から今の時点で意味がわかっていないのですが、そこから技術官僚を独立させたのがこの工部省で、かつては開明派である大蔵省、長州の牙城だと思われていたものの、ということが語られているのですが、まあそうでもないというのがここの主題かなぁ。大蔵省のコントロール化にはないし、薩摩とも普通に関わりあるし、過渡期の技術の集合体のようなものであってもともと英国の初期の技術主導の省庁のイメージだったのだとか、鉄道や電信の初期を牽引し、学校を作り、で、解散した歴史です。2014/07/09