内容説明
凱南先生奥野信太郎没後30年、いよいよ光沢あざやかな名随筆から、中国の文学・食味・旅などにまつわる珠玉51編を集成。
目次
1 中国文学の魅力(古い道;みはてぬ夢;卯酒の楽しみ ほか)
2 中国文化のこころ(シナ人のこころ;季節小景;花愁雑稿 ほか)
3 忘れ得ぬ人びと(季節のオルゴール;辻講釈;勿談国事 ほか)
感想・レビュー
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あきあかね
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「もうニ十年近い昔、ぼくは蘇州の、あのあたりの運河沿いを、半日ばかり歩いたことがあった。秋の日かげが美酒のように濃く、すべてのものを金いろのなかに溶かしこみ、水のいろだけが冷たく鋼鉄いろに流れていた。」 中国の文学や文化、人との出会いを綴る芳醇な随筆集。その文章は情趣と機知に富み、学者というよりも文人という呼び名が相応しい。二十年も前の中国への留学時代を思い返す話が多く、その頃は日中戦争前夜の不穏な時期であったが、著者の随想は時の流れに濾過されたある種の静謐さを帯びている。様々な記憶の断片が夜空の星々⇒2021/01/04