内容説明
不可思議な宇宙的現象によって大気に有毒物質が満ち、人々は病に苦しみながら死んでいく。地下に建設された都市で生き延びようとする兄妹と、取り残され見殺しにされる兄弟。幼い弟は袋に何が入っているか、知っていた。スウェーデンの鬼才、シモン・ストーレンハーグがコロナ禍の世界に放つ、生存をめぐる切な過ぎる寓話。
著者等紹介
ストーレンハーグ,シモン[ストーレンハーグ,シモン] [St〓lenhag,Simon]
1984年生まれ。綿密な時代考証によるノスタルジーと、斬新なSF的想像力が混然一体となったレトロフューチャリスティックな作風で知られるスウェーデンのデジタル・アーティスト。音楽家としての顔も持つ
山形浩生[ヤマガタヒロオ]
東京大学都市工学科修士課程およびMIT不動産センター修士課程修了。開発援助関連調査のかたわら、小説、経済、建築、ネット文化など広範な分野での翻訳および雑文書きに手を染める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
16
アートとストーリーが一体となった物語。ディストピア世界に生きる女性が直面することになった、あまりに絶望的で暗い、ひとつの運命。読み応えと見ごたえがあって、一気に読みました。最後まで読んだあと、もう一度最初から読み直したくなる。気分が良い話ではないのに。そして、この物語と現実のつながりについて考えてしまう。そんな一冊です。2022/08/24
ロア
10
今までの著作とは、絵柄も内容も全く違うのね…(*´ω`*)2022/07/02
チェアー
7
救いのない世界が暗い色調で描かれる。描かれる?あるのではなくて? この世界は実在する世界。もし描いているとすれば希望をまぶしてあるに過ぎない。もはや現実。絶望。 世紀末では人類を生かすためにほとんどの人類を抹殺した。そのルールは一見助かったと思った後も適用される。 つまり、地獄を逃れようとして得たものはさらなる地獄だということ。 何回も言う。 これは絵空事? 2022/07/21
一会
2
陰鬱で精緻な絵と後から意味がわかると恐ろしくなる文章。人類のため、で許されるあらゆる非道。それを行う者達さえ被害者であり迷宮を迷っている地獄と、あらゆる救いを拒む物語。最期の結末が迷宮の出口であることがあまりに悲しい2023/02/18
brzbb
2
人類が滅亡しようとするときに行った選択と、その報い。映画『ミスト』みたいな、どこで間違ったのか、何が最善の選択だったのか、という迷宮。最後の一番大きい迷路、行き止まりにぶつかるたびに「もし出口までの経路が最初から用意されてなかったら」と軽く絶望しながら、それでもゴールに辿りつけたときは本当にほっとした。だから希望は残されているっていうことじゃないか。2022/06/03