内容説明
日本において最も成功した文化的輸出品のひとつであるアニメーション作品は、映画、文学、コミック、ビデオゲームなど多分野において、欧米でもこの数十年のあいだ多大なる影響を及ぼしてきた。しかし、このジャンルを背後で支える「背景美術」については、特に2000年代初頭以前の非デジタル時代に関して、どこか謎に包まれているように感じられるのだ。この世界で最も尊敬されている監督、背景美術作家による、絵コンテ、初期の下書きなどを巡って、作品の舞台裏への旅を試みる本書『アニメ建築 傑作背景美術の制作プロセス』は、これら時代を先取りしたクリエイターたちが創造した異世界の建築群や巨大都市を、「近未来への憧憬」あるいは「近未来からの啓示」として紹介するものである。
目次
AKIRA
機動警察パトレイバー劇場版
機動警察パトレイバー2 the Movie
GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊
メトロポリス
イノセンス
鉄コン筋クリート
ヱヴァンゲリヲン新劇場版
用語集/バイオグラフィー/参照
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
宇宙猫
18
★★★ アニメ映画の近未来の建築を伴う背景美術を紹介。説明は専門的で ふーんって思うしかないけど、絵の迫力や制度はよく伝わってくる。普段は気に留めずに見ている背景も改めて知ると面白い。2023/04/13
Toshi
15
1982年公開の映画「ブレードランナー」、酸性雨が降りしきる未来のロサンゼルスは、近未来の都市風景のイメージを一変させた。おそらくはその影響を受けた日本のアニメ、「AKIRA」、「パトレイバーシリーズ」や「攻殻機動隊」。都市の風景は単なる背景美術から、ストーリーを語る上での準主役となった。ドイツのアートキュレーターによる本で、大型本ならではの原画を楽しめる。「鉄コン筋クリート」を観ていないことを反省。2021/08/14
ようへい
9
AKIRA、攻殻機動隊といったアニメ映画の背景、特に都市に注目した本。ビジュアル多め。近未来的でエントロピーの高い都市が大好物なので、絵を眺めているだけで涎が止まりません。とはいえ、作品を観ているときは物語や人物に気を取られてしまい、舞台装置のディティルは殆ど見逃してしまっています。これをきっかけに、パトレイバーの劇場版第1作目を見返してみました。他作品の二度観、三度観も捗りそうです。あわせて『映像研には手を出すな』も読んでおきたいところですね。2021/12/24
justdon'taskmewhatitwas
3
"アニメは得意じゃない"という言い訳も通用しない、知らなかったというより気づかなかった、想像力が及ばなかったと(普段あまりしない)後悔をしてしまう。実際スクリーンで観たのならどの位の時間なのか? 1ショットの情報量の多さにビクついてしまう。所謂"リアル"の代替として文中「非現実の中の完璧な信憑性」という言葉が出てくる。まさにそこでしのぎを削っている。2022/03/11
参謀
3
アニメの建築画&背景美術の紹介。先駆者の「AKIRA」、「パトレイバー」、「攻殻機動隊」、「メトロポリス」、「新エヴァ」などが掲載されている。今ではデジタルでマンションなどは描かれるのだろうが、前半の手書きのアナログだった頃は職人技なんだなと思えた。本作は海外のアニメ研究者が出した本らしい。なぜ日本人が出さないのかというのは疑問ではある。それだけ、日本におけるアニメ業界が衰退しているというのかもしれない。2021/04/17