感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
9
一般に宗教は原初的世界を設定し、現世をそこからの堕落と捉え、生を苦とみなす。ここから、現世的苦の場である肉体の癒しより心の救済が優先される。が、神学者である著者は現世を「生の次元」とし、現代の精神医学との協働を呼びかけ、心身の「統合」としての健康と癒しを救済と同等に扱おうとした。その際重要なのは、自己肯定が困難な実存的状況にあっても「受け入れられていることを受け入れること」であるという。人間自身が起こした2つの大規模な戦争を通じてこの状況を体験した著者は、社会に繋がる身体の健康の神学的な現代性に注目する。2021/09/29