内容説明
初期のキリスト教会の「富」に関する社会倫理の基調は、神は一切のものをすべての人々に等しく分け与えられている、という信仰にあった。著者は、原典からの引用を豊富に折り込んで、今後の研究の資料を提供しながら、私有財産に関する現代の問題を考える上での刺激を可能とするような概説的展望を試みている。
目次
1 教父にみられる財産批判―古代の自然法とユートピア
2 旧約聖書とユダヤ教における財産と富
3 イエスの宣教
4 原始教団の「愛の共産主義」
5 パウロおよび異邦人キリスト教徒の伝道教団
6 初期キリスト教の共同体倫理における財産問題解決への試み
7 黙示思想的キリスト教とその伝統における財産批判
8 自足という通俗哲学的理想
9 効果的補償による妥協
10 アレクサンドリアのクレメンスの「救われる富者は誰か」
11 カルタゴのキュプリアヌスの「よいおこないと施し物について」
12 まとめ―10の提言