感想・レビュー
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松本直哉
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教育勅語の公布に際して、法律で拘束されるような道徳は真の道徳とは言えず、今は無道徳時代だと言い切る。老子の「大道廃れて仁義あり」を想起させる思想であり、国家にも法律にも縛られない自発的・内発的な道徳を、国家を超越した宗教のうちに見出す彼のキリスト教的社会主義は、窮極的には国家の否定、さらには国家に媚びる既成の体制としてのキリスト教会への否定につながる。その前衛性ゆえに主流の思想にはなりえなかったとしても、社会主義をあたたかく血の通ったものにしようとする彼の理想主義には共感せずにはいられなかった。2015/03/09