内容説明
ヒトラーは勝利するところだった―もし、それを阻止する男、チャーチルがいなければ。西部電撃作戦から対ソ戦決定までの80日間を、雄渾かつ繊細に描く珠玉の歴史ドキュメント。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ののまる
9
ヒトラーとチャーチルを平行して考察。革新派と伝統派の意識の違い。イギリスが必ずしも一枚岩ではなかったのを、チャーチルが戦意高揚していき、ヒトラーは逡巡しながらソ連開戦へと舵を取っていく。偶然や両者の性格の違いなどが、いかに戦局を左右していったか。一つでも違っていたら、今の世界はなかった。2022/10/31
九曜紋
8
再読本。1995年刊。1940年5月、ドイツによるフランス侵攻開始からバトル・オブ・ブリテンまでの80日間の記録。ヒトラーとチャーチルの言動を時系列に描き出す。ヒトラーを貶め、チャーチルを賞賛するという勝利者の史観、連合国の史観に偏ることなく、両者の思考と行動を淡々と記述してゆく。史実を詳細に記述することに重きを置くあまり、やや冗長な印象が残った。2021/01/15
古本虫がさまよう
3
2018春公開の映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』 (角川文庫)の「原作」ともいうべき本?この映画では、時々画面に「日時」が出てくる。1940年5月の一カ月(20日間)の日々を扱っている。映画は、チェンバレン糾弾からチャーチルの国会演説で終わるが、その後も、7月末日まで、ルカーチの本は扱っている。ある意味で、この本の前半部分が、この映画の「原作」といえるかもしれない。ともあれ、映画を見たあとに、このルカーチの本を読むと、非常に当時のことが理解しやすいのではないかと思った次第。2018/04/02
印度 洋一郎
2
ドイツがフランスへの侵攻を開始した1940年5月から、バトル・オブ・ブリテンが始まる8月までの約2ヶ月半、ヒトラーとチャーチルの動向を対比させつつ検証。この時期、ドイツは最も勝利に近づき、イギリスは最も敗北に近づいていた。降伏したフランス艦隊をイギリス海軍が冷徹に攻撃したオラン事件が、イギリス世論の抗戦意欲を高め、アメリカ世論に感銘を与えたという記述には驚く。まだ大学生だったジョン・F・ケネディが、反英派の父親の影響だろうが、アメリカ参戦に反対する運動をしていたという話も興味深い。2010/01/20
みつがね
0
チャーチルが政権を継ぎ、ヒトラーが西部への侵攻を始めた1940年5月10日からの2人の行動を対比しながら描きます。批判をするでも賞賛をするでもなく、中立的な記述だと感じました。登場人物の業績だけでなく人柄にも触れており、とても楽しく読むことができました。2015/12/22