ダウン症候群と療育の発展 - 理解の向上のために

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ダウン症候群と療育の発展 - 理解の向上のために

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  • サイズ B5判/ページ数 274p/高さ 26cm
  • 商品コード 9784763940032
  • NDC分類 378.6
  • Cコード C3047

出版社内容情報

《内容》  この本は,ダウン症について新しい展望をもたらすことを目的とした書かれた.かつては蒙古症として知られていたこの染色体異常について,はじめて医学的な記述がなされたのは1866年であったが,ダウン症存在の歴史はおそらく人類の歴史と同じくらい昔にさかのぼるものと思われる.  最初の医学報告書「白痴の人種的分類に関する観察(The Observation of Ethnic Classifications of idiots)」の著者である Dr.Langdon Down は,この報告書を地方の精神薄弱者収容施設の入院患者たちの観察をもとに書いた.この報告書の中で,彼は外観や一般的行動が似通った特定の症例に焦点をあてた.Dr.Down は,平たい顔と著しくつり上がった眼に注目し,これらの患者たちが原始東洋人種の先祖返りであると結論づけ,「蒙古人」からとって蒙古症(mongolism あるいは mongoloid)という言葉を造りだした.  不幸なことに,この名称は科学的な根拠がまったくなく,蒙古人種に対する極端に否定的な見方と人種的偏見を与えるものとして受けとられた.Booth(1985)が指摘したように,遺伝的に障害をもつ人たちの他のどんな集団も,ダウン症をもって生まれた人たちのように中傷されたり誤解されたりしたことはなかった.何十年もの間,これらの人たちは社会的にも教育的にものけ者にされてきた.  私が1968年にダウン症乳幼児についてのパイロット・スタディーを始めたとき,専門家たちによる文献や彼らの個人的感情はしばしばほとんど嫌悪とも受けとれるほどの偏見に満ちており,私はひどくショックを受けた.おそらく,この極端な否定論は,理解することも克服することもできない問題に直面していた専門家たちの絶望感と焦燥感を反映したものと思われる.幸運なことに,昨今のすばらしい技術の進歩はすべての障害者に対する前向きな姿勢と期待をもたらしてくれた.これらの変化はダウン症児者においては特に顕著なものとなった.私は,こうした人たちに最大のハンディキャップをもたらしているものは,世間一般の悲観的な考え方だと信じている.私たちがダウン症乳幼児たちの潜在能力についてもっと多くのことを学べば学ぶほど,この進歩のために努力してきた人たちの一員になれるような気がする.  本書『ダウン症候群と療育の発展』は,ダウン症児者に独自に,そして直接関わってきている専門家たちによる考えや経験をそれぞれまとめたものである.これらの子どもたちへの私たちの理解やケア,そして教育に対して貢献してくださっているすべての専門家の助言をここに納めきれないことは残念なことである.目次に書かれているように,医療と教育はどのような療育においても相互に依存した関係にあることから,本書では医療的および教育的ケアに限定せざるを得なかった.病気のダウン症児は健康なダウン症児のように学ぶことはできず,健康なダウン症児はまた指導なしに社会性や教科学習的技能を身につけることはできない.  この本の各章は,私が個人的に知っている人たちによって書かれたり,または,たまたま21番目の染色体を1本多くもって生まれてきた子どもたちの人間としての価値や能力に気づいているという点で共通の認識をわかち合うことのできる研究を行ってきた人たちによって書かれている.こうした著者たちは,医療,教育,心理,言語,理学療法というように異なった専門分野に従事している.彼らの仕事は実用的,かつ革新的な研究に基づいている.たとえば,それぞれの分野における専門家としての見識に加え,彼ら自身がダウン症児をもつ親である著者たちもいる.  私は,この本が読者の皆さんに前向きで希望的な姿勢,つまり,すべての人間の生命に対する尊厳と楽観的な見方をもとに,不完全さを拒絶するのではなくチャレンジの対象としてとらえることができるように寄与できることを願っている.また,この本が新しい洞察力やアイデア,そしてさらにはより適切な療育の方法を産み出すような,知的好奇心と興奮を引き出してくれることを願っている.ダウン症児者は,長い間私たちとともにあった.そして,今後も私たちとともにあるであろう.専門家や親として,私たちは経験や技能・知識を蓄積しなければならない.私たちが学んできたことは,ダウン症児者たちだけでなく,精神的あるいは身体的障害をもつすべての子どもたちや大人たちにとって役立つものと思われる.『ダウン症候群と療育の発展』は,こうした情報を相互にわかち合うためのひとつの試みである. (「まえがき」より)    《目次》 第1部  医療的介入  第1章 ダウン症児者のための医療的ケア  第2章 ダウン症児者における耳科学的問題と難聴  第3章 ダウン症における心臓病の見方  第4章 目の異常とその治療  第5章 老化がダウン症の成人におけるアルツハイマー病の発症に及ぼす影響  第6章 ダウン症に関する家族のための遺伝相談  第7章 ダウン症に対する伝統的でない薬物療法は有効か 第2部  教育的介入  第8章 ダウン症児とその他発達遅滞児のためのプログラム:教育モデルの開発  第9章 ダウン症児のためのプログラム:乳幼児学習プログラム  第10章 就学前年少プログラム:乳児期から幼児期への橋渡し 第11章 プリスクールと幼稚園プログラム:目標達成のための方法 第12章 統合のモデル 第3部  特別なニーズを満たすための介入 第13章 発達における粗大運動活動の効果 第14章 ダウン症児たちにおける舌の突出 第15章 ダウン症児たちの摂食管理 第16章 行動管理:親と教師のための手引 第4部  親のための介入 第17章 ダウン症児:家族への影響 第18章 乳幼児期の親子相互交渉における療法的アプローチとしての遊び 第19章 親と子の相互交渉:やりとりすることを学ぶ 第20章 父親と障害乳幼児との愛着行動の促進:モデル・アプローチ 第5部  生活技能のための介入 第21章 青年期と成人期のニーズを満たすための介入 第22章 グループ・ホームと地域での生活 結   び 資   源