出版社内容情報
《内容》 手は第二の脳あるいは目であるといわれている.すなわち手で物体を触ることにより,それを正しく認識し,その性状を知ることができるからである. 手の感覚あるいは知覚はきわめて鋭敏かつ繊細であり,とくに指先で著明である.したがって手に分布している知覚神経を損傷すると,その回復の程度によっては,さまざまな手の巧緻障害が生じる.知覚が全く失われた手は,怪我や火傷を生じやすく,そのためには最低でも防御知覚 protective sensation の獲得が必要になる. 従来,損傷された末梢神経の修復を少しでも早く回復させようとする試みはいろいろと行われている. 脳や脊髄神経の活性を高め,再生軸索の伸長をよくするために,代謝促進剤,ビタミンB複合体などを投与する,縫合部における神経線維レベルの回復を促進するために,手術技術の向上や縫合材料の改良とともに,N・G・F(nerve growth factor)や細胞接着物質(Laminin,Fibronectin など)などの化学物質の添加が有効であるという研究成果が数多く報告されている. これらの神経修復成績の判定は,従来主として筋電検査,筋力テストなどの運動機能の結果で行われ,知覚機能は比較的おおざっぱな知覚検査に依存し詳細なデータは少なかったと思われる. Lee Dellon 博士による“知覚の再教育 Sensory Re-education”という概念は,それまで漠然とは考えていたものの,知覚の訓練方法を具体的に示すものとして,きわめて衝撃的であった.彼は,このつかみどころのない“知覚”のリハビリテーションを,数多くの科学的根拠をしめしつつ,私どもに教示してくれた. この訓練は,再生軸索が感覚受容器に至り知覚が再現する,末梢部における再生の促進を行うと考えられたが,彼は,知覚中枢の再学習による可塑性のある脳の再編成(Reorganization)であると述べている. Dellon は,これまでの報告された膨大な末梢神経の論文を読破し,そのなかでも知覚の再生に関する文献を引用し,ときに批判して彼の論旨を組み立てていった.さらに独自の実験計画をたて,基礎的および臨床的にこれを実験的に研究し,その成果を彼の推論と比較し検討を加えた. これらの研究過程において,動的2点識別法 moving 2 P.D.という特異な知覚検査法を生み出し,従来の static 2 P.D. と並んでその有効性について論じている. 末梢神経修復後における,知覚の再教育の必要性を強調し,その実際を具体的にのべている彼の著書(Evaluation of sensibility and re-education of sensation in the hand.1981 年)は,この方面における唯一のものであるとともに,学問的に充実した知覚に関する名著である. (「監訳者の序」より) 《目次》 第1部 基本にかえる 第1章 古典(文献的考察) はじめに/解剖学/生理学 第2章 新しい形態学 はじめに/感覚小体の進化/ファーター・パチニ小体/マイスナー小体/メルケル“小体”/末梢の皮膚無毛部 のモデル 第3章 感覚の神経生理学的基礎 はじめに/末梢感覚神経機構/中枢神経機構 第4章 神経断裂後の感覚小体 はじめに/初期の感覚研究/パチニ小体/マイスナー小体/メルケル触盤/臨床とのかかわり 第5章 神経修復後の感覚受容器 はじめに/初期の再神経支配の研究/パチニ小体/マイスナー小体/メルケル触盤/交叉再神経支配の研究 /臨床とのかかわり第2部 知覚の評価 第6章 理論的ではあるが機能的でないもの はじめに/モバーグ/ウエーバー・テスト/ピックアップ・テスト/その他の検査 第7章 知覚回復のパターン はじめに/神経損傷後の回復パターン/回復パターンに対する仮説/回復パターンに対する臨床的裏付け 第8章 動的2点識別テスト はじめに/検査の実施について/健常値/異常値/中枢神経系との関連/コレステジア(Choraesthesia)とプ ラスチック・リッジ/臨床とのかかわり 第9章 振動覚と音叉 はじめに/過去の臨床研究/音叉/振動計(vibrometer)/位置覚/臨床応用/振動知覚検査 第10章 手の知覚検査 はじめに/機能的な知覚の検査法/評価第3部 知覚の再教育 第11章 手の神経修復の成績 正中神経/尺骨神経/指神経/結論 第12章 知覚再教育 知覚再教育のルーツ/知覚再教育の手技/神経修復後の知覚再教育の成績/知覚再教育の適応文献一覧資料1 訳語について資料2 検査方法について用語索引人名索引



